警察庁は、生活道路の車両の制限速度を30km/hとする通達を出した。
先月の自転車の車道通行の件といい、警察庁は突然、国交省に先駆け、
交通の新しい解釈を積極的に進めているように感じる。
これは9月に示されたゾーン30という、都市交通計画上の地区単位で
交通を制御する考え方がベースになっている。
ゾーン30通達
この結果、一般的な幅員6mの生活道路の多くは、
車が対向車・歩行者・二輪車を、常に意識しながら走行することとなる。
欧州では30年前からコミュニティゾーン計画が既に機能しているが、
日本では、ようやく実施され始めたことになる。
欧州では、住宅ゾーンの生活道路については、
通過交通を排除し、歩車共存の思想を理想としてきた。
日本がゾーン規制を長年取り入れなかった理由は、
1、日本の道路計画は、道路の段階構成(ブキャナンレポート)を基本としており、
道路構造令で、道路規格を縛り、計画的な道路整備を行ってきた。
2、同様に、道路計画の基本は歩車分離の思想である。
幅員6m道路は構造令上では1車線道路であり、
日本本来の歩車共存の生活道路は、あいまいな存在であった。
3、警察庁以下、交安の立場では、危険を排除する理由で、ゾーン規制のための
ハンプや狭さくなどのデバイスを安易に認めなかった。
今回の判断は社会情勢の変化にも関係がある。
1、高度成長時代以降、街の成長速度が止まり、幹線道路の整備は遅れる一方で、
住宅市街地は効果的でない道路形態となった。
2、歩行者、自転車の交通事故発生率が高くなり、
欧州の交通計画を参考にするようになった。
ITSシンポ
3、 国交省→計画・設計・施工認可
警察庁→規制・指導・運用
という立場の違いで、交通マネージメントが行われてきたが、
運用サイドで計画の必要性を、住民レベルで考慮するようになった。
日本の交通マネージメントは、官民ともに、欧米、特にアメリカの
物の形だけが真似され、運用されてきた。
細部にわたる構造規定は厳格である反面、
道路の方針、位置付けはあいまいなままであった。
今回の一連の通達は、その歴史経過が理解でき、評価できる内容であるが、
次の段階で進めるべき、交通施策の重要な視点が残されている。
それは、個人のライフスタイルに合わせた公共交通機関の整備である。