先日、稲の刈入れの行われている名護周辺を自転車で回ると、改めて珍しい地名が多いことに気づく。
変わった発音の地名には、ビーマタ、ヨフケ、オーシッタイ、ウンザ、オッパ、ブリケナ、テニヤなどがある。
外国語の発音のようだが、それぞれ為又、世冨慶、大湿帯、宇茂佐、乙羽、振慶名、天仁屋、となり、
何となく理解してしまうが、発音そのものが本来の意味で、漢字は後の当て字とも考えられる。
島津藩の時代に前田を真栄田、徳山を渡久山と変えさせられたような歴史もある。
名護の発音自体、地元ではナグゥと発音し、年寄りの会話からは時にナン、ングゥ、
などと聞こえることもある。名護城公園は『なんぐすくこうえん』と看板にある。
琉球語が言語か方言かで、国内では未だに言語学上の決着はついていないが、
少なくともユネスコが消滅の危機にある言語として、
アイヌ語、八丈語に加え、琉球の「沖縄語」、「国頭語」、「宮古語」、「奄美語」、「八重山語」、「与那国語」
の6つをあげているように、一般的には際立った特徴を持つ言語として認識されている。
沖縄の地名の語源を調べてみると、歴史的に証明されているのは『おもろそうし』に出てくるもの程度で、
日本語の漢字に無理にあてはめたような釈然としない例が多い。
今までの言語学の視点が大和から構築されてきたので仕方ないが、
きっともっと古い歴史の意味が隠されているに違いない。
大震災直後、東北の地名とその現地を調べていったが、地名の中に津波や
災害歴を表すものが数多く、現況の被災状況に一致し、驚いた記憶がある。
古い地名に託された地区の未来ともいうべき言霊が、地名に残されていたのである。
東北の地名、とくに字名には、カタカナ表記が多く、その多くはアイヌ語だと言われる。
河川・山・池の名前などは、自然の地形をアイヌ語で表したものが語源であるという。
古い町の由来を調べ後世に伝えることは、町づくりに必要なことである。
最近は、街づくりのワークショップで行う一つの手法として定着してきた。
地名や名所を訪ねながら、子供に教えるフィールド学習は、学校教育でも行われている。
一方、新しい町の名称を付ける立場になった者の責務は大きい。
決まった提案者がいたり、公募によって行わたりするが、人気投票ではないので、
多くの場合、最終判断は人選された人達で行われる。
当たり障りのない選択により、全国どこにでもある町名になるが、これが特徴がなく実につまらない。
新町、栄町、幸町、みどり町、中央町、本町、旭町、北町、南町、東町、西町…….
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土地の特徴を出そうとするあまり、集落の対立に至ることもあり、人の名前、
学校の名前、会社の名前などを付けた例もある。
豊田市、ダイハツ町、スバル町のような固有名詞は、対象が無くなった時のことを考えると心配になる。
角栄団地という名の団地は、田中角栄がロッキード事件で逮捕されると改名した。
あまり人を呼び込むことを考え、他愛のない地名をつけるのはいただけないが、成功した例もある。
酒田市の区画整理の住宅地に『こあら』という地名がある。もともとあった字名が古荒であるが、
単におもしろいのではなく、愛着される地区名に定着している。
町の行政管轄上、古い地名が無くなることは仕方ない面もあるが、まちの記憶を残すことは大切である。