街づくり・村おこし活動の若者たち

Katzu

2013年12月15日 12:19



全国各地の地方都市を巡り、街づくりに関する話を聞いていくと、
どの街でも必ず出てくる悩みは、商店街の再生・活性化の問題である。
安全な街にするために、広く明るい公園や高規格の歩きやすい道路、
目につくモニュメントなどのハードなプランでは、効果のない段階にまで来ている。
町医者が患者への薬の投与をあきらめ、手術をするかという段階で、
患者の良くなりたい意識を引き出さなければ治らないという状況なのである。

ここで登場するカンフル剤が、若者を中心とする地域イベントである。
街の話題づくりから街のシンボル、観光の目玉になる例も多い。
街づくり屋というと、イベント屋さんと勘違いする人もいるほど認知されている。



 さらに過疎の地域はさらに深刻で、地域経済の低迷から人口は減少し、
存続さえ危ぶまれる集落もある。
ハードなインフラ整備も必要ではあるが、村おこしのための一品運動から
始める例も多く、ここでもUターンの若者と村の営農者が主役となる場合が多い。
この経緯は、重機の入らない被災地のボランティア活動とも共通性がある。

 最近のまちづくりに関する活動には、多くの若者が興味を示し活躍している。
その背景には、大学の地域学、交流文科系から、地域環境計画、環境経営学、
環境デザインなどの工学系に至るまで、教育実践の対象としての範囲が広いことがある。
卒業後も街づくりの現場で活動したいと願う学生は多い。

彼らの安定した就職先となると、公務員、教職員、コンサルタントなどになるが、
現場サイドからは、早く専門的な技術経験を積むことが要求される。
コンサルタントはクライアントの要求を満足させることが仕事なので、
倫理観やポリシ―のない技術者ならともかく、理にあわない計画に
胃に穴があくほど悩みつつ、家庭の生活のために身を削ることになる。
その結果、大学で実践した街づくりとは程遠い現実に、落胆するかもしれない。



 しかし、若者の活動は街づくりには欠かせない存在にもなりつつある。
都会で最も荒廃した街が大阪の西成区にあるが、ここでも若者達が
空店舗でライブを提供したり、白衣で通りを駆け巡る医療関係者がいる。
中には事件に巻き込まれるケースもあるが、地元の人さえ嫌がる危険で暗いイメージの街で、
果敢にボランティアや街の活性化に貢献している姿には、感銘を超え崇高さすらおぼえる。



街づくりや村おこしに携わる彼らの口から聞く共通の悩みは、生業(なりわい)としての継続性である。

地方の街づくりに関しては、街歩きやエコツアーなどで地道に活動をするNPOが多い。
リーダーの育成と安定的に継続することの難しさは、どの団体も同じ課題をかかえ、
地域おこし協力隊などの国の補助金システムでは、隊員は臨時採用である。



大人達には、既存の就職システムからはずれた活動に不理解な人も多く、
その経験からその活動を批判し、無視することはたやすい。
しかし、志のある若者を活かしきれないのは、日本社会、大人の既存システムの病害でもある。
活動を支援し援助したいと画策しても、街づくりに関しては継続性のある活動に結び付けることが難しい。



社会活動の優先性、ボランティア活動の理解度の高いアメリカでは、
人気の就職先にはNASAやGoogleなどに続き、NPOのMayo Clinicや
American Cancer Society、JICAが手本としたPeace Corps(平和部隊)が入っている。

ものづくりと金融・サービスの経済活動に特化した日本社会から、
5次産業的な何かを確立すべき時なのかもしれない。

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