雪国のまちづくり

Katzu

2014年01月10日 19:03

雪国らしいまちづくりを目指し、色彩や意匠デザインを想定した地区計画や、
まちのマスタープランを勘案したことがあった。
北国の住宅地計画には、具体的に建築物に彩度の低い色調を定めたものもある。



そんな人間の思惑とは裏腹に、雪は自然に音と色彩を奪う。
雪が降ると、色彩は失われ、静かで落ち着いたまちに変わっていく。
雪国のまちは、自然の中で生かされ育ってきたのである。



雪国の仕事をする期間が長かったにも関わらず、
これが雪国のまちづくりだと確信できるものはない。
積雪の地域差や時期の違いがあることに加え、
経験やテクニカルな検証が追い付かないことにも拠る。

近年の気候変動は、地域的な低温、多雪、積雪時期の変化などに影響し、
冬期の水害、雪崩などの自然災害が起こりやすい環境にある。



最も積雪の多い山形県の肘折地区は、現在の積雪深は186cmで
例年より少ないが、降雪時に温泉にたどり着くには、積雪ポストだけが頼りになる。
一昨年、地滑りで集落は孤立したが、先日、温泉へのループ道路が完成した。



温泉街は融雪道路ではないが、路面の雪は少ない。



温泉の送水パイプや排水路の熱のために、多少の降雪は自然融解する。
今年の異変は正月の雨だけでなく、屋根の氷柱(つらら)がないのは記憶にないという。




雪国の集落景観は美しいが、冬の市街地では防災とコミュニティづくりが先行する。

まちの維持管理を最小限にするコンパクトなまちづくりの方針とは相反するが、
排雪ができる河川や排雪のシステムが確立していない場合は
雪のための空間を造ることが、雪国の防災の基本である。



● 克雪
雪は風とともに降り、積もり、凍り、落ちる。
古い融雪システムには、自然エネルギーを活かしたシステムもある。



雪崩柵の設置、暴風雪柵の設置、道路の堆雪幅の確保、消雪道路の整備、
建物の落雪のスペース確保などは欠かせないハードな取り組みである。
広い路肩は、夏期は二輪車レーン、冬期には堆雪路肩という解釈も生まれる。



● 排雪
道路の除雪システムの整備とともに、排雪溝の整備や排雪場の確保など、
公共空間の整備が必要である。
毎年、排雪溝や雪下ろし中の転落事故が多く、
個人の危機管理が必要な生活を強いられる。




一方、ソフトな取り組みは、雪国のまちづくりに欠かせない要素である。

● 除雪
道路の除雪は基本的に役所の仕事であるが、
雪国特有の除雪コミュニティが活かされる場でもある。



旧市街地の空家が増え、生活習慣も多様になり街のコミュニティの維持は難しいが、
除雪NPOや除雪ボランティアによる活動を支援する試みが増えている。

● 利雪
近年、雪を邪魔者とせず、雪資源としての活用が増えている。
雪氷エネルギーは、雪室による低温貯蔵施設、熱交換による冷房などに利用されている。
かつて、雪国の冬は、夏の農繁期に比べ出稼ぎや準備・生活維持期間であったが、
最近は農村コミュニティを活かした、寒冷地ならではの食材づくり、商品づくりも行われている。
雪室などの伝統と自然エネルギーによる技術開発は、雪国の生活を変えていく。



● 親雪
雪に親しんだ遊びや生活を体験することにより、雪国の祭事・イベントを
観光やまちづくりに活かした例が増えている。




 一様に降る雪に対する対策は、空間の確保が第一であるが、
市街地では公共交通機関を利用したコンパクトシティのシステムが有効である。
雪国の一人一台の車利用は、事故や渋滞、過重な除雪費による不経済社会の根源でもある。
高齢化が加速する雪国では、電車の定時運行はもとより、安心安全なバスやLRTなどの
公共交通を基軸にした、まちづくりを目指すべきであろう。



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