山梨豪雪災害に見るまちづくり

Katzu

2014年02月19日 16:14

 今回の山梨豪雪の様子を見ていると、これからの街の在り方が浮き彫りになる。
山梨県は南アルプス地域の一部を除き、国交省の豪雪地帯には指定されていない。
豪雪地帯の定義は累年平均積雪積算値が5,000cmを超える地域であり、
年間100cm以下の甲府は該当せず大雪対策はなかった。最も114cmの積雪深は、
これまで最大の年間降雪分が、1日で降った積雪量に相当する未曾有の豪雪であった。



     山梨県 豪雪地帯

大雪から4日後、政府と山梨県は災害対策本部を設置した。
幹線道路の開通だけを優先しながら、災害救難の遅れに至る経緯は、システム、法制度、
数値資料がないと何も動けなかった東日本大震災の反省も空しく、全く同じ様態であった。





 豪雪は、西高東低の気圧配置に南からの低気圧の押し上げがあり、大雪に至った。
積雪のメカニズムは理論的に解明されてはいるが、地上の気温湿度、上層の気温、
上層気流速度の組み合わせで決まるため、瞬時のデータから降雪を予報することは難しい。
不確実性気候の時代に入り、空間的な気象システムを構築することが
いかに重要かは、これも東日本大震災の教訓であったはずだ。


          甲斐九筋 山梨県

山梨県は、武田信玄により整備された軍用道路『甲斐九筋』を骨格として形成されてきた。
一方、戦後の都市交通計画は、幹線道路から優先順位を付けるブキャナン理論と、
ラドバーンシステムの影響もあり、古い街道を見直し、高速道路、新市街地のバイパスにより
街の形態を変えながら、歩車道分離計画が進められてきた。
しかし、この積雪では歩車分離システムは機能しない。


          国道20号 上野原

 経済活動を効率的に行い、住環境を整えるうえでは欠かせない計画論であるが、幹線道路が寸断され
都市機能が麻痺する状況が続くと、災害の多い日本では信玄公の『甲斐九筋』の考えの方が、
外敵(災害)に対しより安全で、すぐ避難することができる最も有効な計画だと思える。
広域幹線が1本ストップしただけで、末端の道路が機能しないのでは生命を守ることさえ危うい。
道路を再ネットワーク化し、物流を見直すほどの大きく変える視点がなければ、再編は実現しない。

豪雪災害に対するこれからのまちづくりは

〇 新たな公共交通インフラの整備
  広域幹線道路への負担をなくし、安全に運行できる交通技術により、
  車に依存しない新たな広域公共交通インフラの整備が必要である。

〇 都市の公共スペースの確保
  瞬時の豪雪には、堆雪スペースを設け除雪するか、河川水路で流雪するしか方法はない。
  雪が降らないために高密度に市街化された街は無防備であり、
  都市のオープンスペースの確保は、防災対策に欠かせない要素である。

〇 独立したコミューンの強さ
  孤立集落が増え、物流が寸断され、街のコンビニが命をつなぎとめる現状をみると、
  集落単位の自立した強いコミューンを作ることが、災害に対応したまちづくりの目標になる。


           国道139号

 東京の大雪に対しては経験を積むこと以外に、確固たる対策は思い当たらない。
 オリンピック開催もいいが、それまでに防災対策を講じなければならない。

 雪かきの仕方を見ると、どの程度の積雪地域に住んでいるかがわかる。
あらゆる災害に対して言えるが、災害を知っているかどうかで災害対策、救難活動ができる。
『今まで経験したことがないので。』、がいつもの弁解になるが、特に公僕を生業とする人には、
あらゆる災害の現場と状況を知ってもらいたいと思う。
もうそんな時代に突入しているのである。

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