海洋の環境変化と深海探査

Katzu

2011年11月22日 13:52

 地球温暖化が、CO2の温室効果ガスと密接な関係にあることが、今や常識となった。
異論はないが、地軸の変動や、海洋のエルニーニョ現象、気候の急激な変動と、
地域間のシーソ―構造のメカニズムについては、まだ研究の途上である。
なぜなら、その分野は大気科学に留まらず、生物地球化学、海洋学、地質学、
地理学、地球物理学、天文学までの広い分野にわたるからである。
特に深海は、第二の宇宙とまで言われるように、
その環境はまだ謎に満ちている。




 海面温度の上昇は、大気温の上昇とリンクして語られるが、
CO2の影響を直接受けない海底水温は、変化がないのだろうか。
 この疑問に答えられる資料文献を探した。

 IORGC(地球環境観測研究センター)では、海洋大循環による熱や
CO2の輸送や変動特性を捉えようとしている。
パラオのドップラーレーダーによる台風観測、北極海の堆積物コア採取、
トライトンブイ深層観測などを行っている。



 その中で注目されている研究がある。
JAMSTEC(独立法人海洋研究開発機構)が、北太平洋最深層部の水温上昇が、
南極海での気候変動とリンクしていることを、海洋データ同化手法を
用いて実証した。
北太平洋の海水温の上昇により、運ばれた南極付近の水は、やがて冷やされ
深層部へ沈み込み、インド洋東部、太平洋西部で低温となり、
世界の気候変動をもたらしている。
ラニーニョ現象が引き起こすメカニズムの解明が、期待されている。
この辺は、JAMSTECキッズにわかりやすく紹介されている。こちら



 地球温暖化に関して、マントルの温度上昇について理論展開する人は
いるが、物理的に解明されていない。
JAMSTEC高知コアセンターによると、大地震発生時に、海底に大量の
高濃度水素ガスが発生したという、研究結果が発表された。
深海の熱水温床、マンガンノジュールなど、深海に潜むエネルギーは
計り知れない。
次世代エネルギーと目されるメタンハイドレードは、海底の低温、高圧下で
安定しているが、一度バランスが崩れると膨大なエネルギーを誘発する。
これは生物生成メタンで、化石燃料の一種である。

 深海探査技術は日進月歩である。
現在ODP(国際深海掘削計画)が、世界各国3000人近い研究グループで
進められている。



 日本からは深海探査船「地球」が先導的な役割を担っている。
国内では多くの無人探査船、調査船が活躍しており、
震災後の測量地形データは、JAMSTECのマルチビーム音響探査機で
取得されたものである。
国交省では、ダイバーによらない水中超音波式三次元映像データ化が
試みられている。

 地球温暖化に伴う気候変動の予測研究、地震の予知システム、
自然エネルギーの開発の鍵を握るのは、
地球のマントルに近い地点の海底探査にある。


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