本部の海を泳いでいると、足に何かがまとわりつき、突っつくような感覚を覚えた。
ダイバーは足を引っ張られることが一番恐怖を感じるが、この辺はハブクラゲの
刺症例もあり、驚きあわてて振り返った。すると、多くのロクセンスズメダイや
他の魚が餌をねだり、体を突っつき、後を付いてくるのであった。
このポイントはサンゴや魚類も多く、体験ダイビングや小グループのシュノーケリング、
多くの家族連れの観光客が訪れる。
沖縄本島のサンゴ礁は、海洋博バブルの開発、オイルボールの漂着、
オニヒトデの大量発生、水温上昇による白化現象により壊滅的な状態にあった。
近年、下水道の普及や環境対策工事、環境教育やサンゴ保護活動により回復の兆しがある。
海洋観光もビジネス化し、安心・手軽・安価を売りに、多くのツアー会社がしのぎをけずる。
シュノーケリングツアーでは、老若男女がフローティングベストを着用しポイントに案内する。
魚に餌付けできることを謳い文句にする会社さえある。
海の環境を提供する立場の者がこれでいいのかと疑問に思う。
世界のダイビングリゾートでは、魚の餌付けをしないことが常識となっている。
例えば、パラオのロックアイランドの日系ツアー会社は、餌付けを禁止する旨を
観光客に指導し、海の環境をそのまま提供することをポリシーにしている。
パラオ人にも環境の意識を高め、餌付けをする韓国系台湾系ツアー会社との
意識の違いが彼らの誇りでもあった。
希少生物のいる水域では、官民あげて、さらに厳しく日焼け止めオイルを制限する。
そんな外国人たちの努力もあってパラオは世界遺産にも登録された。
その意識の違いを知り、次に沖縄に来た韓国・台湾の観光客は、
この沖縄の今の現状をどう思うのだろうか。
『沖縄本島の海は既にサンゴ礁の環境は失われたから、魚は箱の中の観光資源だ。
釣りの餌や漁礁と同じで、魚を集めるのはなぜ悪いのか。』 という意見があるかもしれない。
しかし、決められた魚が増えても、餌にたどり着けない種族が淘汰され、
魚の性質も変わり、生態系が崩れることにより、元の海の環境には戻らない。
海を売り物にするのなら、過去の歴史を振り返り、素直に先を考え、
今の島の宝物を身売りしてはいけない。
海水の汚濁・高温化→サンゴの死滅→魚の減少→海洋ビジネスの衰退→
サンゴ礁の再生→生態系の回復→海洋ビジネスの回復
地球環境の変化の中、いばらの過程ではあるが、
沖縄の観光は海の環境とともに変わり、これからも変わり続けるだろう。