台湾の断崖

Katzu

2011年09月29日 01:21



 台湾東部の太魯閣渓谷から太平洋に落ち込む断崖を見ていると、
台湾の国と民族の歴史が紐解けてきた気がする。
国立遺伝子研究所の指摘した、
DNA比較による台湾と沖縄の断崖のような違い、とは何か。

台湾東部海岸は、太平洋からほんの20kmの距離で、
3000m級の高山に到達する。
このように急な断崖の連続は、世界的にも
インドネシアのスメル山あたりしか見られない。
しかも、この山群は大理石の塊で、この土地の石文化を育んでいる。
白い岩肌と、そのカルシウムの解けたアルカリ性の青い水は
美しすぎて、魚類も育たない。



この周辺には阿美族や太魯閣族を含め、山岳少数民族が住んできた。
そしてこの自然環境は、長い間、漢民族の支配をのがれ、
日本軍も反抗に多大な犠牲を払った。

 最近、DNAの人種起源を探る研究が盛んで、
その特徴の一部を捉え、民族論を展開する主張も多く見かける。
アイヌ・大和・沖縄は同じDNA配列を持つとか、
日本人には朝鮮人にないDNA要素があるとか、
台湾人と漢民族には同じDNAの特徴がない、とかの類いである。

 断崖のような民族の違いを際立たせたのは、小サンプルのDNA鑑定である。
一方、断崖により人を遠ざけ、山岳少数民族の希少性を生んだのは、
この特殊な地理環境に他ならず、生活・音楽文化においても、
台湾の本省人・外省人・沖縄人との違いは際立っている。

小泉文夫の世界の民族音楽集大成の中の、『台湾の音楽』は、
アフリカやブルガリアンボイスにも通じる驚愕の1枚であった。



 短絡的に台湾と沖縄の断崖のような違い、ではなく、
台湾少数民族と多民族を区別した断崖が、その違いを生んだと解釈できる。



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