文系と理系、研究と生産との境

Katzu

2011年12月14日 15:44

 

 学問は文系(人文・社会科学)と理系(自然・応用科学)に分かれる。
週末は文系の史学会と、理系のGODACのセミナーに出席した。

この二つのシンポ・セミナーは、大震災という同じキーワードを持っていた。

 教育・研究の世界では、特に震災以降大きな変化が現れている。
研究者の間で学問の境をなくすことで、
新たな解釈を加えたいという姿勢が起きている。
それは単なる話題性や人集めの為ではなく、社会からも必要とされている。
大震災と原発事故がそのきっかけになったのは言うまでもない。

象牙の塔のような研究分野の閉塞性が、ト-タルの危機管理に
寄与できなかった反省から、開かれた補完し合う知識交流が盛んになった。

その結果、新たな科学の潮流が生まれつつある。

例えば

1.文系・理系の境のない学問

 現在堰を切ったように、全国で行われている調査がある。
地層の災害歴から防災計画に役立てる調査である。
物質の年代測定から歴史を検証する方法は一般的に行われている。
沖縄県埋蔵文化財センターの石垣島の大津波痕跡について報告があった。



また、痕跡のない、科学で特定できない事柄を伝承から
推察するという手法もある。

地球環境の監視体制が必要と言われるが、
トータル的な科学分野の研究者達が協力しつつある。

2、新しい分野の発掘

 東邦大の大越教授による、震災後の生物の生態調査の報告があった。
ストレスを受け、生き延びたアサリの変化が紹介された。



震災前後の生態は大きく変わってしまった。
ここから津波生物学という新しい研究分野が提言された。

大震災は、今まで積み上げてきた応用科学を越えてしまった。
ここに、科学者、技術者の苦悩がある。
次の領域に到達するための研究は尽きない。

第3次産業から派生したソフトウェア産業などの
知的生産を行う第4次産業だけでなく、
第5次産業と言われるメディアの創造や
感性の生産を育成する分野もこれに当たる。

ある教授は、今が学生や若い研究者にとって、
課題を見つけ、新たな研究を始める良い機会だ、と語った。

3、再認識されている分野

 人間の被爆影響については、ビキニ環礁の第五福竜丸事件以降も
研究が行われたが、近年進んでいなかったという。
特に、人間以外の生物被爆については未知の部分が多い。
休火山を研究する科学者も話題に上がったが、大地震と同じで、
誰も関心を持たない生物や環境が、実は重要な研究であることが多い。
何も変わらない環境が、地球を支えているからである。



 何のために研究するのか。
科学の目的とは、人間の持続的生活・幸福を追及するためである。

研究は研究、調査は調査で帰結しない。

研究者は、そこから何が産み出されるか、
までも考えなければならない。

一般の人々からも、生産や変化、安定につながる
わかりやすい説明と結論が求められていると感じた。


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