縄が結ぶもの
上野の国立科学博物館で、インカ帝国展が開催されている。
大変な人気で花見の時期に重なり、開催中40万人の記録に迫る勢いだという。
確かに、生々しいミイラや、マチュピチュの3D映像など、
魅力のある展示がそろっている。
日本のアンデス文化研究は世界的に有名で、リマにある天野博物館は
40年前からアンデス研究の先駆的な研究施設であった。
その時は、インディオ→黄色人→日本人という長い図式を思い描いていたが、
最近は最遠地の情報も身近なものになり、多くの人の興味を集めている。
熱心な観覧者は、時間をかけ観察し、前に進めないほどで、
展示物も満足に値するものであった。
しかし、計らずも、最後の展示に興味が釘づけになった。
アンデス文化は文字を持たなかった。
キープという縄が文字を表す唯一の手段だった。
沖縄にも同じ藁算という課税を示す手段があった。
太平洋をつなぐこの縄が、新しい民族の歴史を示すかもしれない。
と、この展示は締めくくられていた。
改めてその2つを調べ直すと、インカのキープは課税の数量を表し、
各桁単位を結び目で表していたようだ。
インカ帝国を統治するための重要な証拠であった。
沖縄の藁算は同じく課税の数量を表し、
藁の本数を単位ごとに結びまとめたものである。
明治時代まで残っていたらしく、竹富島の喜宝院にも展示されている。
沖縄から、パラオ、ヤップ、ポナペ、マーシャルと東に進むうちに、
先のイースター、南米大陸へと思いは先走った。
この南太平洋を結ぶ民族移動説は、遺伝子解析からも注目されている。
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