九州北部豪雨について

Katzu

2012年07月18日 14:14

 今回のこの災害の特徴は

1.1時間100mmを越える雨量、総雨量4日間で800mmという
  『経験したことのないような大雨…気象庁』、であった。

2.被害地域が福岡、佐賀、熊本、大分の平野部から山域にかけ、
  広域災害の様を呈した。

3.38万人に避難・指示勧告が出された。

 1の記録的豪雨については、時間降雨量の観測記録を更新した地点は、
全地域で16か所に上った。
一方、近年にも同規模の雨は観測されており、
100mm/時を越える記録も残っている。
この豪雨は梅雨末期の特徴になりつつあり、
停滞した梅雨前線に南洋の湿った暖かい空気がぶつかり、
上昇しながら積乱雲が発生したものである。



 注目すべきは積乱雲が次々に発生しながら、
前線沿いに移動し被害が広域化したことにある。
積乱雲は、対流圏上部の温度が低いため上昇しながら発達し、
雲頂は高度10,000m成層圏まで達する。
高層天文台によると、鹿児島以北の対流圏上部の気温は
寒冷化する傾向にあるという。
地上と上空の温度差がこの現象を引き起こしている。



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 都市防災の課題も見えた。
河川・水路計画は、確立降雨量、設計確立年と流出係数の条件により決められる。
今回の雨は、想定外に限りなく近い降雨量であった。
道路の側溝や水路は5~7年確立の場合が多く、
おおよそ時間降雨量が50mmを越えるとあふれ始める。
河川については30年から100年確立で設計されるが、
おおよそ100mmを越えると限界になる。

 あふれた雨は、流出係数の高い道路を早い流速で駆け降り、河川に到達する。
その頃、隣の沢が集中豪雨を受け、同様に道路を流下していく。
設計上想定された、流出係数の低い畑・原野は水没し、さらに早く河川に集中する。
流速を上げ排水させた方が、効果的な流路設計であるが、予想を上回る
流量の水が、堤内から堤体をえぐる状況では、危険な状況になる。
このような条件は設計では想定されていない。
一級河川筑後川下流域も、100年確立なら
HWLの限界に限りなく近かったはずである。


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 現在の都市構造物は、防災を第一義に考えた設計というより、
確立年を下げ、経済状況に合わせた整備を行ってきた。
その危ういバランスが一度崩れると、もともと危機管理能力に乏しい
都市の施設は一気に危険にさらされる。
原子力政策と同じで、国土政策も経済優先で進んできたのが、
今の都市防災の現実である。

 避難計画に関してはどうであろう。
被害が甚大で一部避難が遅れた地区があったと聞くが、人的被害は最小限だった。
大震災の教訓が活かされ、避難勧告が早期に出されたためだろうか。
38万人の移動を指示できた意義は大きい。

 異常気象の原因は、茨城の竜巻と同様に偏西風の蛇行、
ラニーニョ現象によりもたらされた。
そのメカニズムは、Co2による地球温暖化という紋切り型の表現では
説明しきれないほど複雑であるが、この異常気象は都市生活の
エネルギー負荷の増大が影響していることは確かである。



 地上だけではない。
フィリピン海の海水温の上昇が、今回の雨雲の原因となったが、
日本近海の海水面の温度も同様に上昇している。
海底の温度は、海溝部と海嶺部では温度の変化が違い、
海流の流れに影響を与えている。


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 都市部の高温化、上空の大気の湿潤・寒冷化、海嶺部水温の低下、
海溝部水温の上昇などが、異常気象を誘発する。
さらに地底では、大震災による地殻の変動とともに、
火山活動が活発化していく状況にある。

 日本列島周辺は海溝から、成層圏まで、列島の西から東へ、
北から南まで、気象条件が変化しつつあり、
どこで自然災害が起きてもおかしくない、不安定な状態にある。
従来の天気予報だけでは対応できず、
立体的な観測予報システムを整え、公開する必要があろう。


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