ゴールデントライアングルの秘密

Katzu

2012年09月04日 21:28



 タイ北部のチェンマイからラオス北部のルアンパバーンに向かい飛んだ。
ラオス航空のATR72という双発のプロペラ機であった。
外務省の資料には、調整不良もあり利用を控えた方が良いとあったが、
陸路は15時間と聞いて、あえて利用した。



眼下には、地球にはまだこんな緑があったのか
と思わせる広大な密林が広がっていた。
タイ、ミャンマー、ラオスの国境地帯は、
黄金の三角地帯(ゴールデン・トライアングル)と呼ばれ、
世界最大の麻薬・覚せい剤の密造地帯であった。
世界各地、日本でも、三方境は悪者が集まる地点となる例が多い。
ここは、中国国境に200km、ベトナム国境に300kmと近接しており、
何処にも逃亡が可能である。
この地は山岳地帯でもあるが、戦略的な要所でもあり、
日本軍がビルマ戦線、インパール戦線で敗れ、
追われた多くの日本兵が逃げ込んだとも言われている。



 この地への興味は、戦略的、地理的ポテンシャルだけではない。
それは、中国長江文明と、メコン文明の結節点にあたる点にある。
日本から沖縄を通り、南へと宗教、遺跡、農業、音楽、
そして人種などの共通点をたどると、
どうしても、この地帯に辿り着いてしまうのだ。
そして、東は台湾から沖縄、西はブータン・ネパールへと
1本のラインでつながってしまう。

その動機となった対象を概観して分けて考えると

1.人類学的考察
 アフリカ起源の人類移動の末端か、もう一つ起源が台湾少数民族、
 アボリジニなどにあり、古琉球の港川人もこれに含まれると考えられる。
 同じアフリカ起源の北京原人や北部モンゴロイドとは異なる進化を遂げた。



2.文明論的考察
 近年、長江文明は世界4大文明と並ぶ文明とされている。
 その影響は日本、ミクロネシア、東南アジアにも派生した。
 その派生した文化は、時同じ14~15世紀にかけ各統一王朝が各地に誕生した。



3.文化人類学的考察
 宗教的には、大乗仏教が東南アジアの北部ルートと南部ルートに分かれ、
 広がったが小乗仏教はタイ北部で途絶えた。



 音楽的には、インドネシア、タイ、ラオス沖縄などに共通する音階がある。
 楽器形態、特に三線などは沖縄から南中国にかけて共通のものがあるが、
 その材料はメコン流域のものである。
 また、このエリアは竹を材料にした共通した文化圏を形成している。



4.生物地理学的考察
 マレー半島起源の芋文化と長江起源の水稲文化が交差した。
 日本の水稲文化は長江文明からもたらされた説がある一方、
 熱帯ジャポニカ産の存在が注目され、再びメコンから
 沖縄経由で北上したとも推察される。
 照葉樹林地帯は、南中国から沖縄をかすめ日本本土に至る
 広大な生物学的共有圏を形成している。



 一方、現在の気候分布、植物形態から推測すると、
 むしろ北部沖縄からミクロネシア、メコン北部にまたがる
 亜熱帯系植物圏を形成している。



 以上から推察すると、
南中国と東南アジア北部に、社会・自然の大きな潮流の違いが生ずる。
中国を南に行くに従い、日本的な何かを感じ、タイから北にいけば、
東南アジア圏を離れたプリミティブな何かを感じる。



この広大なゴールデントライアングルに魅かれるのは、
両者を遮り続けたもの、あるいは派生した源があるからであろう。
この付近の調査はあまり行われていないが、
いつかその秘密が明らかにされるかもしれない。

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