東南アジアの開発の方向性

Katzu

2013年04月13日 20:34

 東南アジアの開発は、欧米諸国の植民地政策から始められた。
現在は中国、韓国、日本が加わり、各国の政権と歩調を合わせ
開発援助が行われている。



        メコン川沿岸開発道路 ビエンチャン

注目されるのは中国の南下政策で、メコン、メナム(チャオプラヤー)、
イラワジ(エーヤワディー)川沿いに中国経済の影響力が増大しつつある。
その基軸となる中国とラオス、タイ、ミャンマーを結ぶ道路は、
中国の南北経済回廊とも呼ばれる。
中国南部国境に接するラオス、タイ、ミャンマー北部の市場を
支配しているのは中国製品である。



        ラオス北部の中国系量販店

中国とミャンマーとの関係は、石油天然ガスのパイプライン建設、
環境問題となっている鉱山・ダム開発、ベンガル湾軍港借財など、
日本が軍事政権に経済封鎖を行っていた時期に進められている。
現在ミャンマーと日本との貿易割合は5.5%と低く、中国に大きく遅れを取っている。



 一方、日本の開発方向は、メコン総合開発を推し進める一方で、中国との
競合を避け、アジアハイウェイを主軸としながらも、東シナ海からベンガル湾に
かけての陸の東西ルートを中心に開発援助が進められている。
東西経済回廊と呼ばれるこの計画には、タイのミャワディからのヤンゴンまでの
タイ・ミャンマー最短ルートの道路整備が最重要であるとのJETROの報告がある。



        イラワジ川 中部マンダレー

一方でこの報告書は、少数民族紛争が両国の足かせとなっている点を指摘している。
そもそもミャンマーの少数民族問題は、多数のビルマ族に対し、
イギリスが周辺少数民族に、保安防衛機能を与え統治したことに端を発している。
135に細分されるという少数民族は、各国境付近に散らばっており、現在も国境の町は
隣接国からの出入りしかできない町も多く、国家として完全統治されていない。
内陸のマンダレー、バゴ-管区の一部でさえ、先月イスラム教徒と
仏教徒との衝突が起き、夜間禁止令が出されている。
中国国境のカチン州、バングラデッシュ国境のラカイン州は反政府活動があり、
現在も、渡航要検討の危険地域である。

          
          ミャンマーの少数民族地域

日本のODA事業は、メコン川の橋梁整備を主体に
東西国間のボトルネックの解消に効果を発揮してきた。


            外務省

戦略的に遡ると、第2次世界大戦の連合国側が策略した、
インド中国ルートを確保し、中国の南下を支援した動きと、マレー半島を横切り、
ビルマ、インパールへ続く大東亜共有圏を画策した日本軍の東西の動きは、
現代の中国を中心とする南北経済回廊と、日本の東西経済回廊を中心とした戦略は、
実は過去と同じ構造・方向性であることにに驚く。



一方、この戦略構想のネックとなったのは、
地域間を隔てる異なった民族との闘争の歴史でもあった。
計画論的にも、自然地形、国の歴史、民族分布、左右交通の違いを
前提に考えれば、東西を強引に結ぶ案には少し無理がある。

広域の物流インフラは、グローバルな流れを作り、新しい街が発展するかもしれない。



         メナム川の海運 バンコク

 しかし、母なるメコン川、メナム川、イラワジ川の作った川の文化圏は、
南北にその独自性と民族の独立性を保ってきた。
その地域の広域幹線が整う前に、点と点を強引に結んだ開発は
リスクが高く、地域の独自性とその環境さえ失われる可能性がある。

歴史は繰り返され、川の流れは変わらず海に注ぐ。

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