地球を守るための生活

Katzu

2015年01月28日 19:04



 2009年のCOP15(気候変動枠組条約国会議)で、日本が打ち出した
温室効果ガスの2020年までの削減目標は25%であった。
震災後、この目標は原発の削減効果を見込まず、3.8%と大幅下方修正し、
原子力を基幹エネルギーとするという矛盾を抱えたまま、ハイリスクな未来に向かう。



我国の温室効果ガス排出量は2005年比で減少するどころか、逆に1.3%増加した。
部門別では産業・運輸部門で減少したが、家庭・商業サービス部門で上昇している。
技術革新や企業努力が個人生活まで浸透しなかった、余裕がなかった結果である。




 当初の目標を、個人の実働生活で達成する方法はあるのだろうか。

自家用車を手放し3年が経った。
2013年の世帯当たりCO2排出量は3,646kg、逆算すれば、ガソリン自動車5000km
走行を目安に減らせば、25%削減となる(ガソリン1,000ℓで2,320㎏のCo2排出と仮定)。

さらに、自家用車を公共交通機関へ転換することにより、車100%、航空機60%、
バス35%、鉄道15%のCO2排出効率の組み合わせにより削減は可能となる。

ハイブリッド車、電気自動車利用に変えればCO2排出量は減少するが、
化石燃料利用に頼るという宿命を背負っているため0%とはならない。




 今年、天皇が訪れるパラオのコロール島は、人口1万人の島に日2万台の交通量の
地域比較ではアメリカの車所有率をもしのぐ世界一の車利用率90%の島であった。
幹線道路は中古日本車により渋滞し、街の中心部では排気ガスの煙と臭いが厳しかった。

海岸は地球規模の気候変動の影響で、毎年高潮の時は港の桟橋が冠水し、
台風が襲来する機会も増え、離島の災害リスクは年々高まっている。



自然世界遺産の島で、都市の目標は低炭素社会・廃棄物ゼロエミッションの実現と、
健康で安全な都市環境、自然環境との共生にあることは明白で、少なくとも現地で
働く日本人達は皆共通の意識を(恐らく今も)持っていた。

そんな高い目標を示しながら、実生活では実現できず志し半ばで2年が過ぎ、震災後、
パラオと同じアメリカ型車社会の沖縄で、無駄な物を持たない生活から現在に至った。




 車利用率80%の沖縄において、車を持たない生活は容易ではない。
徐々に日常の移動量が減り、生産活動量も減り、経済活動が滞る。
生産エネルギーと生活エネルギーをバランスさせながら維持していくことは難しい。

離島では似たような生活体験をする人によく出合う。

海外でコンピュータを教えていたAさんは、科学技術の進歩と豊かな暮らしの
意義に疑問を持ち、離島で有機農業の生産の道に進んでいる。

建設関係の設計をしていたBさんは、都市の無駄を生産し続けたことを悔やみ、
島の山間部で自分の家を中心とした生産コミュニティづくりに励んでいる。

デザイナーを目指すCさんは、離島の自然食材をアレンジした飲食店を
同年代の島づくりの仲間とともに運営している。





このような生活をローリスク、ローリターンな生活と冷笑することはたやすい。

地域環境は経済投資により、生活は潤い維持されるかもしれない。
地球温暖化とCO2削減のロジックは、いずれ見直されるかもしれない。
エネルギー問題は科学技術で解決するかもしれない。

しかし、都市のエネルギーと人間の欲望の増大が、地域環境を変えてきたのは明確で、
このままでは50年後の住み良い地球環境など想像すらできないのが現実である。



彼らのような生活を皆ができるわけではないが、彼らの共通点は
常に環境に与えるリスクを最小限にとどめるという視点を持っている。

地球を守るための生活のヒントはこの辺にあると思うのである。

関連記事