ブラジルを中心に1か月かけて中南米を歴訪した。
その前の1か月間は準備に時間をかけ、情報をかき集めたが、
出発1週間前になってもルートが決められない状態だった。
その甲斐もあり、結果的には、心配していた健康、治安、金銭面の
トラブルの一切起こらない貴重な経験となった。
JAL便でニューヨークトランジットの10時間、前回行きそびれた
サウスフェリーでスタテン島に行った。
世界中の人と富を集めるマンハッタンは世界経済の中心であるが、
海から眺めると金属的で危うい島に思える。
アマゾン川は延長7,025m、流域700万㎢、流量20.9万㎥/sの
世界最大の河川で、人類の必要とする淡水をこの1河川で潤し、
アマゾン熱帯雨林は地球の三分の一の酸素を供給すると言われる。
一方、地球規模の気候変動と森林開発によって、流域は
すでに二酸化炭素排出源になっているという報告もある。
リオから飛行機でマナウスに向かう。
眼下には豊かな農地が広がりやがて、首都ブラジリアが見えてくる。
鳥の羽を広げた形の印象的な計画都市は、すでに50年が経ち
衛星都市が増え、緑で覆われ外縁部があいまいになっている。
アマゾン流域に入ると開発の爪痕が目立ち始める。
開発の順序は、当初は開発道路を短冊状に伸ばしながら
区画整理のように矩形に囲い、ゾーンごとに整地されていく。
首都移転によるアマゾン開発は誤った計画ではなく、特に日本主導で
行われた鉱山開発による国産鉄工業の育成は、産業全体を牽引し
ブラジルの近代化に貢献してきた。
農業についても同様で、日系移民により作付された柿やミカンなどの
作物は、すでにブラジル語となりブラジル社会に深く浸透している。
問題は、全体の開発量が制御されることなく、開発が進んだことである。
特に食産業主導の農地開発、金山開発が批判の対象となっている。
7年前からJICAがリモートセンシング技術で監視を後押ししてきたが、
むしろ現地の法整備と住民とのコンセンサスの方が急がれる。
ゴム貿易で栄えたマナウスはアマゾン開発の中心都市で、
ここでアマゾン川は黒いネグロ川と黄色いソリモインス川が合流する。
マナウスから水質の違う2流合流地点を過ぎ、マナウスから南に100km
流域の中心にあるロッジに3日間滞在し、周囲のジャングルを探索した。
雨期の最後の時期は水位が上がり、ジャングル全域が水で覆われる。
流れのある川以外、光の届かない水の表面はすべて水藻で覆われる。
まるで草で覆われた閑静な公園のような風景である。
ここ数年は水位が上昇するようになり、多くの動植物が失われた。
多い時は例年より10m上がったと言う。
住居や森の木々には津波の傷跡と同じような喫水線が白く残っている。
床上浸水し退去した家も多く、フローティング式に改造した家もあった。
まるで、地球温暖化が進んだウォーターワールドを見るようだった。
雨季の動物たちは、木に登るか残った土地に残り、出会う機会も多い。
ガイドが川で泳ぐナマケモノを捕まえてきた。
ナマケモノは、セクロピアというパパイヤに似た形の
覚醒作用のある葉を主食とし動きはのろく、寝ていることが多い。
生活形態もユーカリを主食とするコアラに似ている。
セクロピアの木を見つけ森に返す。
昼はクモザル、イグアナ、タランチュラ、弾丸アリ、ピラニア、カワイルカ、
夜はワニを探しに出かけ、危険でも珍しい動物に接することができた。
静かな森に突然、鳥の鳴き声に驚かされることもしばしばで、
深夜ホエザルの鳴き声や虫の音、カエルの鳴き声に包まれ見上げると、
北の地平線にある南十字星から北半球とは逆の形の星座が広がる。
500万種ともいわれる生物に囲まれ星空を眺めていると、
ニューヨークよりアマゾンの方が、世界の中心であると確信した。
マナウスの国立アマゾン研究所は、アマゾンを再現した公園にあり
京大とJICAの共同によるマナティの調査研究が行われている。