2012年05月22日

雨のやんばる

 週末、2日続けて雨のやんばるの森に入った。
そんな人間は珍しく、山中では一度も人に出会わなかった。
やんばるを人から遠ざけ、その自然を守ってきたものは5つある。

雨のやんばる

それは
1.年間3000mm以上の雨と湿度
 雨の日の森は意外にすごしやすい。
 もともと暗いが、すがすがしく天の光さえ感じる。
 よくあるのは、腕時計やカメラの内側が曇るほどの湿気である。
 そして、不意打ちのシャワーは小さな沢を下り、苔のため滑り歩きづらい。

雨のやんばる

2.照葉樹林と繁茂する中低木・竹類
 樹高20m以上のイタジイ、イジュ、などの高木だけでなく、
 葉の大きい中低木や竹が一層森を暗くし、びっしり行く手を阻む。

雨のやんばる

3.ハブ・山ヒルの恐怖
 これまで、野道で海人・山人に出会い、『何か採れるんですか』と聞くと
 『ハブが居るから気をつけた方がいいよ。山ヒルもいるからね』
 と何度も言われた。
 この言葉に旅行者は弱い。
 しかし、ハブは30年前に一度見ただけで、
 現在は絶滅危惧種でもいいのではないだろうか。
 山ヒルは地球温暖化で、最近は東京付近に多く出没している。

雨のやんばる

4.ヤンバルクイナなどの鳥や虫の声
 秋の昼さがり、オオシマゼミの金属的な声の洪水に、耳が変になった後、
 夕方にケェケェケェとヤンバルクイナの鳴き声が響き、
 内地のものとは違う、カエル、コーロギ、ツユムシの鳴き声に驚く。
 この声の一斉攻撃に、知らない者は畏怖を感じたことだろう。

雨のやんばる

5.米軍訓練場
 北部訓練場はゲリラ訓練場として使用されており、やんばるの半分近い
 78㎢の面積を占める、国内最大の米軍練習場である。
雨のやんばる

 現在は砲撃訓練はなく、この土地利用が皮肉にも手つかずの自然を守る結果となった。

雨のやんばる

 自然の営みを見るのは、雨の日が最適だ。
シダ類、キノコ類は雨の日に増殖し、つた類は太陽に向かう。

雨のやんばる

蝶は木の下で休み、貝が這い出る。

雨のやんばる

降った雨は30mm/時を超えると、小さな谷も滝になり、
川を駆け降り、1時間で海に達する。

雨のやんばる

 海と山の環境は表裏一体である。
やんばるの森の南側、塩屋湾以南は、大雨が降り続いて
海は既に、赤土の流出で濁っていた。
この源河、津波付近は近年、農地開発が行われた地域である。
これは国頭マージと呼ばれる粘着度の弱い、赤黄色の土砂流出が原因である。

次の日も、海岸付近の赤褐色の濁りは消えていなかった。

雨のやんばる

 霧雨の山に入り、再び暗い山域から下りると、天気雨(ティーダアミ)が降ってきた。
東部海岸に出ると晴空が広がった。
この慶佐次付近の砂浜の濁りはなかった。

雨のやんばる

この流域にはマングローブ林があり、この北側にはやんばるの森とダムがある。
東村の北側と国頭村の海は、かろうじて、やんばるの森に守られている。



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Posted by Katzu at 16:43│Comments(0)山の環境
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