2017年06月30日

自転車の街へ

自転車の街へ

 先月、名護市と今治市は、『自転車を通じたまちづくり交流協定』の締結を行った。今治市はすでに街を挙げて自転車の街に取り組み、自転車専用道のあるしまなみ海道は、サイクリストの聖地となっている。

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名護市は28年に渡るツールドおきなわの歴史のある街で、市民レースの最高峰レースとして国内外に知れ渡っている。市民の認知度も当然高く、市街地でも交通規制のある大会は、年中行事として市民の協力の基に開催される。

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郊外には羽地内海の島々、太平洋と東シナ海の海岸線、やんばるの森を抜ける変化のある魅力的なコースが多い。台風と北風の強い日を除けば、1年中走行可能で、国内では最も自転車の街にふさわしい都市であるかもしれない。

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 過去に行った自転車の街や自転車道の計画を振り返ると、残念ながら絵に書いた餅であったり、一部整備されても維持できずに消えていった例が多い。その理由は、事業展開の遅さや継続性、理解度の不備から利用者の低迷に至るものだが、とりわけ日本の交通慣習である二輪車としての位置づけのあいまいさに因るところが大きい。

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アメリカ型の車社会の歴史のある沖縄では、なおさら自転車の位置づけは低い。本国の自転車の認知は、ほんの十年前の健康バイクブームに始まったにすぎない。


季節と気候という自然環境の影響も大きい。夏は快適な自転車環境でも、雪国では冬は利用困難になる。一年を通じ温暖な沖縄でも、冬は北風で乗れない日が続く。

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平地で渋滞の発生する都市では自転車は有効な交通手段であるが、マナー無視の利用者側の問題も大きい。沖縄の自転車利用率は全国に比べ低い。数年前まではロードバイクの認知度も低く、クラクションを鳴らされることもあったが、バスのクラクションに驚き幼児が引かれた事故以降、最近はなくなった。



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市内の幹線道路に自転車の路側マーキングが増えた。道路構造令を語るより、視覚的に二輪車が走行できる安心感がある。もう一歩踏み込んで、ネットワーク化することと利用者が増えることが求められる。
 
道路を計画、設計、供給する立場の者は車椅子と自転車で街に出ることを勧める。危険個所の発見だけでなく、子供の視点やロードバイクのスピード感を知れば、交通弱者も強者もないノーマライゼーションの大切さに気が付く。


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 サイクリストの立場で街を走ると、街路の危険個所やマニュアルの矛盾点が見えてくる。例えば、新しく国道のデッドスペースに設置された一方通行の自転車専用レーンは、安全で快適であるが、交差点間隔が長いため逆走車も現れる。歩車道境界ブロックは2cmの段差でもリム打ちパンクの原因になり、出入り口の5cmの段差は転倒の危険性がある。するとロードバイクは依然と車道を走ってしまう。

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交差点は用地確保の関係で路側帯を狭くする設計が多く、二輪車にとっては危険である。諸外国では二輪車の停止線を車の前方に置くが、50cm以下の路肩では車の前に出れず、後ろから巻き込みの危険を感じつつ車両の通過を待つか、降りて歩行者となるしかない。


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自転車レーンに駐車する車の追い越しは最も気を遣い、上の例では先の交差点の視認性に欠け、車が増えれば巻き込みの危険がある。オランダでは、反則切符はおろか、すぐに逮捕されてしまう。


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那覇に比べ田舎の子供たちは自転車に乗っている。
なぜ目立たないのだろう。
彼らは歩道だけでなく、細い道を通っているからである。
子供の通る道を一緒に行くと、街中には幹線道路以外に安全な街路があることに気付いた。本来は街の歩行者ネットワーク計画を作るべきであるが、有る無しに係わらず、安全な道が認知されるべきなのである。

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地図にマーキングしながら郊外を走っていくと、『ちゅらまーい』というマークを発見した。これはもっと知られるべきサイクリングルートと思ったが、新しく始まったレンタル小型電気自動車の推奨ルートだった。通過交通のない農道は、鼻歌交じりのポタリングにはもってこいなのである。

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これからの交通の将来は、車の自動運転だけでなく、セグウェイ、観光カート、人力車、キックボード、トゥクトゥクなど多種多様な交通機関と連携しながら、生活道路レベルのサービスを認識することにある。

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最近、市内には新しいサイクルショップや駐車場にサイクルラックを設置する店舗も増え、外来者も利用するようになったが、それを継続するのは、地元の生活者が一時の興味だけでなく生活の術にすることだろう。

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