2013年11月12日
秋のやんばる

ミーニシ吹く季節になっても、やんばるの森は常緑の照葉樹林であるため、
紅葉することもなく、ススキだけが秋の風情を感じさせる。

夏が過ぎても、森はケーン・ケーンと金属音のオオシマゼミの声に包まれていた。
山道を不穏な動きをするセミが横断して行った。
不思議に思い後を追うと、オキナワキノボリトカゲが生きたオオシマゼミを
くわえているのであった。

6月にノグチゲラの力強いドラミングを聞いて以来、この森に何度も通うように
なったが、その姿を確認したのはつい先月のことだった。

春に聞こえた枯れ木付近にいると、キョッ、キョッと鳴声が聞こえ、
最近は、あいさつ代わりに軽いドラミングをしてくる。
50m近く離れた木には、春に巣だったのであろう小さめの若鳥も見られた。
彼は自分の存在とテリトリーを教えながら、間違いなくこちらの存在を認識している。
30cm近い大柄なこの鳥は繊細で頭もよく、カメラを向けると太陽の方向に移るか、
木の陰に回ってしまう。普通は1回だけ姿を見せ、30分待っていても戻ってこない。

国指定特別天然記念物で、絶滅危惧IA類に指定されている彼は、
人と自分の距離を生活の場にも応用しているのである。
現存するノグチゲラは200匹程度と言われるが、
最近では名護岳や人家近くでも確認されている。
道の隣接地に生息するのは、
1に、開発による枯木が多いこと
2に、マングースバスターのトラップが多く外敵が減ったこと
3に、人間は危害を与えず安全であること
などが考えられる。

チョウ類は越冬のためか数も少なく、リュウキュウアサギマダラがつがいで飛び回っていた。
秋は台風の季節で、降水量も多く森は湿っている。

秋の色は限られるが、実りの秋でもあり赤い月桃の実が生っている。

林道沿いでは、薄紅色のサキシマフヨウの花が見ごろである。

北部の西銘岳付近では、既にツワブキの花が咲いていた。
ヒカンザクラ同様に北部から開花するのであろう。

夕暮れになると、森は静まり返り、虫の音よりコノハズクのコホッ・コホッという声が響き渡った。

台風と突然の夕立は保水されることなく沢水となり、
養分とともに海に流れ込み、海も表裏一体の環境を作り出す。

この夏の海水温は高く、奥間付近の礁湖内のサンゴには白化現象が見られたが、
やんばるに近い海流の交わるこのリーフは、ほとんどその影響を受けていない。
度重なる台風の影響も心配されたが、少し濁りは残るものの
浅瀬では、赤土の流入もなく、サンゴ類の生育は順調であった。

大潮の干潮時に入ると、春より大きくなったキビナゴの群れが力強く動き回っていた。

何百匹ものシマハギの群れが、太陽の光を浴び集団で移動していく。

スズメダイの群れは、すぐにエダサンゴに隠れ、

テングカワハギもゆらゆら漂いながらサンゴをかじっている。

インナーリーフでは卓状、枝状、隗状サンゴ、ソフトコーラルがバランスよく発達し、
魚類はサンゴの種類に合わせ、小魚を安全に養うことができる。
ここは本島で最もサンゴ礁内の環境が保たれた、貴重な海域である。

リーフ内は、海水温もまだ27℃近くあり、海の中はまだ夏の風情であった。
やんばるは、海と山の環境が保たれた自然サイクルの中で、
多くの生物達が生活する、貴重な自然環境であることがわかる。
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