覗きと解放感の空間デザイン
設計屋とは、奇なるもので自分の個性を主張したがるが、
大抵それは時と共に評価は分かれ、いづれ物も荒廃していく。
ましてや学校で学んだ空間デザイン論なんて、現場に当て
はめなければ、絵に描いた餅に過ぎない。
公園や道路、まちそのものを設計してきたなかで、
経験的な空間デザインのこだわりを紹介したい。
例えば、1枚の覗き窓がある。ここからは道路と車と青い海と島が見える。
ここで、どんな海か、周りはどんな環境なのか自分なりに想像してしまう。
これだけでは、リゾート地か住宅地かはわからない。
そして全体を眺めるとその実態がわかる。
海岸沿いの幹線道路と公園、駐車場と海が広がる。
島と思っていたのは半島であった。
子供達がサッカーの練習をしている。
雰囲気からはリゾートではない、市街地の外縁部であることが分かる。
これは魅せるためのからくりである。
はじめからすべてを見せてしまうと、変化のない姿に飽きてしまう。
狭い範囲から想像させて、一気に全体を見渡せる仕掛けづくりが
一つの景観設計の技である。
この技法は、いろんな場面に活用できる。
エントランスなどはまさしくその例である。
今帰仁城の入り口から、振返ると残ったサクラの小道の先に青い海が広がる。
城の場合は敵の侵入に備え中を見せない設計になっているが、帰路に城下や、
周辺全体の景色を見せる仕掛けになっている。
公園設計の場合は、死角を作らないことが設計条件となるが、
広々、整然とした公園は面白味がない。
人間は変化あるものや秘め事に興味を示すので、
いたづらっぽい仕掛けも必要である。
スペイン建築のパティオなどは、採光を取り入れた
中庭のプライベート空間が気持ちいいだけでなく、
来訪者を迎え驚かせる仕掛けづくりの好例である。
関連記事