覗きと解放感の空間デザイン

Katzu

2011年07月21日 12:40

 設計屋とは、奇なるもので自分の個性を主張したがるが、
大抵それは時と共に評価は分かれ、いづれ物も荒廃していく。
ましてや学校で学んだ空間デザイン論なんて、現場に当て
はめなければ、絵に描いた餅に過ぎない。
公園や道路、まちそのものを設計してきたなかで、
経験的な空間デザインのこだわりを紹介したい。



例えば、1枚の覗き窓がある。ここからは道路と車と青い海と島が見える。
ここで、どんな海か、周りはどんな環境なのか自分なりに想像してしまう。
これだけでは、リゾート地か住宅地かはわからない。



そして全体を眺めるとその実態がわかる。
海岸沿いの幹線道路と公園、駐車場と海が広がる。
島と思っていたのは半島であった。
子供達がサッカーの練習をしている。
雰囲気からはリゾートではない、市街地の外縁部であることが分かる。

これは魅せるためのからくりである。
はじめからすべてを見せてしまうと、変化のない姿に飽きてしまう。
狭い範囲から想像させて、一気に全体を見渡せる仕掛けづくりが
一つの景観設計の技である。

 この技法は、いろんな場面に活用できる。
エントランスなどはまさしくその例である。
今帰仁城の入り口から、振返ると残ったサクラの小道の先に青い海が広がる。
城の場合は敵の侵入に備え中を見せない設計になっているが、帰路に城下や、
周辺全体の景色を見せる仕掛けになっている。




公園設計の場合は、死角を作らないことが設計条件となるが、
広々、整然とした公園は面白味がない。
人間は変化あるものや秘め事に興味を示すので、
いたづらっぽい仕掛けも必要である。

スペイン建築のパティオなどは、採光を取り入れた
中庭のプライベート空間が気持ちいいだけでなく、
来訪者を迎え驚かせる仕掛けづくりの好例である。




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