広い空間の孤独

Katzu

2011年07月28日 00:28

 岩山に取りつくと、色々な空間に出会う。
小窓のような隙間、岩につぶされそうな狭い空間、上の鞍部の、
体が宙に放り出されるような空間がある。
 この広い空間に飛び出すイメージを形にしたいとずっと考えていた。
広々とした草原から山に向かい、ゆっくり上に登りつめた感覚。
それは絵画的でも音楽的でもある。
レッドツェッペリンの天国への階段? 
ビートルズのロングアンドワインディングロード?
エルトンジョンのグッドバイイエローブリックロード?
その曲のイメージに近いが、それぞれ歌の意味が違う。



 ある時その形に近い姿を目にする。
札幌のモエレ沼公園はイサムノグチの作品がベースになっている。
この公園で最も印象深いデザインはプレイマウンテインであった。
他に有名な作品はたくさんあるが、一番シンプルなデザインが頭に残り続ける。

 実際このようなものを設計し作業段階に入っても、
イメージ通りのものを作るのは意外に難しい。
何も引かない、何も足さない条件であるからだ。
大きさ、照明灯、バリアフリー、遊具の要望、円錐の施工と管理など、
この姿だけを押し通すだけの理由が必要である。

印象に残る風景とは、そうして残ったものである。

海の上のモンサンミシェルに続く道は言うに及ばず、




ヤマトの造形美とは明らかに異なる、勝蓮城跡に登る道などもその類いである。



歴史的な価値だけでなく、風景デザインがシンプルに構成されたものは、
優れた造形として印象付けられる。

これらは、
広々とした空間に個を対比し、
宇宙に向かう唯一無比の孤独を感じさせる存在、
なのである。


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