風がつくった沖縄の街のデザイン

Katzu

2011年12月12日 18:33

 沖縄もようやく20℃を切って、冬に入った。
半そで1枚で過ごすうちに、ミーニシ(新北風)が吹き始めたのも、
赤いトックリキワタが咲いたのも知らず、長そでに腕を通し、
七輪に火をいれてみたら妙に熱燗が欲しくなった。

 昨年ここに来た時、冬は北風が吹き寒いですよ、と言われた。
その時は、日本海の庄内地方の地吹雪や、仙台のビル風でもあるまいしと思った。
沖縄の北風は、北東の風だと知ったのは後のことだが、
あまり気に留めるどころか、むしろ経験してみたいと思った。

確かに温度以上に寒い。
外に出れば体感温度が低くなり、家にいてもヒューヒュー音で寒々しい。

 昨日は史学会の防災シンポで大学に行った。
防災に関する話題で、フクギの集落の話が出た。
オトギリソウ科のフクギの屋敷林は、夏の太陽、秋の台風と冬の北風を遮る。


            渡名喜島

沖縄には、中国や日本のような条坊制の都市はないが、中世以降、
碁盤状の集落は、“蔵風得水”の風水思想に基づいて造られたと言われる。
この宅地の屋敷林は300年前から植えられ、その形態は、集落を囲むもの、
街区を囲むもの、個々の屋敷を囲むものなど、集落により異なる。
 
むしろ民家の建築形態には共通点がある。
琉球古民家は、南側を玄関に、北側を便所、炊事場にして
居室は温かい位置にレイアウトされている。

フクギの集落は、沖縄独自の集落景観であるが、
琉球古来の集落は、道が曲線で入り組んだ構造で、
それは風の通りを遮り逃がすためであった、
という仲間教授の話があった。

沖縄の自然環境にあった宅地計画のため、集落配置を調べていたが、
同じことを考えていた。



 粟国島や久高島の集落は道が入り組んで、ループしている。
フクギの屋敷林も点在する。
この形態は、敵の侵入を遅らせ迎え撃つための、城下町の陣形にも見えるが、
風を直接受けず外に逃がす、防災集落のような形態である。
条坊制の形態ではないが、既に“蔵風得水”の景観も備えている。



 理解できない琉球デザインの中に、城壁の曲線がある。
中城城の城壁の曲線は、防御上弱点となり無意味とも思えるが、
美しく緻密に作られている。
塔の曲線や、エントランスの装飾は欧州の城壁にもあるが、
忍び返しの反り上がった日本の城壁とも違い、
機能的には、風を逃がす理由以外には説明できない。



これは琉球デザインの豊かな美意識とも考えられる。
波と風のイメージを、形で表したものが曲線だからである。


 琉球古武道をじっくり見ていると、その動きはすべて円に帰着する。
琉球空手も相手の力を受け返し利用するのは、円の動きである。



人の動き、自然の動きを受け止め、形にしたのが城壁であり、
街そのもののデザインであったのかもしれない。


蔵風得水:背後に丘を控え、街が守られる風水の考え方。
地中に流れる生気が、水によって限られ風によって散らない場所に家を建て、
死者を埋葬すれば、その気をうけて子孫の幸せが約束されるという。

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