ソメイヨシノの桜前線は関東まで北上した。
桜の代表種はソメイヨシノで、明治政府が日本の花として全国に広めた新種である。
ソメイヨシノは今までオオシマザクラとエドヒガンの交配種と言われてきたが、
千葉大・静岡大の合同研究チームが遺伝子を解析した結果、
コマツオトメとエドヒガンの交配種である可能性が高まった。
4月10日上野公園の桜はちょうど満開で、この日約30万人が訪れた。
外人観光客も多かった。
聞き慣れないコマツオトメの原木は、小松宮彰仁親王銅像の前にあった。
原木の説明碑の前に座る中国人を、どかせて写真をとるが、
あまりこの木に注目する人はいない。
そもそも小松宮とは伏見宮殿下で、鳥羽伏見の戦い、維新戦争で官軍を指揮し、
帝国陸軍大将となり、その後日本赤十字の総裁となった人らしい。
花は満開を少し過ぎていたが、ソメイヨシノに比べ小さく、開花期間は少し長く
一気に散るソメイヨシノとは違い、山桜に似たひかえめな桜であった。
外国人客が多いのは、いまだに日本=さくらのイメージがあるからだ。
当然これを日本帝国主義のイメージで、こころよく思わない人々もいる。
学術的には否定されているが、韓国ではソメイヨシノは済州島の王桜だとして、
外国プレスにアピールしている。
沖縄のヒカンザクラは、タイワンザクラと紹介している中国の観光ガイドもあった。
国花がこれだけ注目される国も珍しい。
その理由は、日本人はサクラが好きであるからに他ならない。
その真意は、冬の自然環境と年度変わりの季節を体験して、
サクラの開花を迎える心構えである。
でもこの日の人の関心は、席の確保と宴会場さがし、
そして木に登った花見ネコだった。