6月1日、改正道路交通法の一部施行に伴い、
自転車の安全運転義務違反者に対する安全講習が義務づけられた。
道路交通法上の自転車は軽車両なので、車道を走らなければならない。
買物の主婦や通学生には、突然言われたに等しい衝撃かもしれない。
狭い車道路肩と歩道のどちらを選択したらいいのか、
今度は道路法を運用する側に対応が求められている。
日本では二輪車としての自転車の位置づけが、法的にも構造的にも
総合的に規定されないままに、安く手軽に乗れる交通具として扱われてきた。
世界一の自転車所有国である理由は安いシティサイクルが庶民の足となり、
戦前から生活の庭としての3間道路(幅員5.5m)がその普及の場となった。
日本統治時代の南洋の島にも今も同じ道路の名残りがある。
パラオ
戦後の急激なモータリゼーシャンとママチャリ文化と
不節操な専門家の対応がさらなる今の混乱を招いた。
その後、自転車教育も罰則も徹底せず、交通規則もあいまいなまま、
都市近郊では無知で悪質な自転車の暴走を生んでいる。
道路を提供する側も同様で、歩車分離を理想としながら、
自転車に関しては交通慣習に迎合した形を取った。
道路構造令では、自転車歩行者道(自歩道)なる日本独自の解釈を行った。
『自転車は車道』が世界標準で、バイクを含めた二輪車レーンが基本である。
構造令を作った先生方は、安全に歩道を走らせることに自信があったのか、
守るべきものがあったのか、最も設計する技術者自体、この常識を知らなかった。
自転車専用道路は利用が伸びず、平成5年に自歩道幅員の最低幅は
2mから3mに変わったものの、現在も自転車通行可の歩道は4割に近い。
交差点部は最少路肩の50cm、車道を広げるより歩道を広げたほうが安い、
余った幅は植樹帯、グレードアップは人目に止まるもの、
と設計をこなせばこなすほど、何の疑問も冒険もしたくなくなる。
広く分離された自歩道があれば良いが、路肩が狭いにもかかわらず
異様に広い歩道、植樹帯が多いのは作る側の屁理屈がある。
路肩を広げる手段を考えても実現しないのは、用地買収に加え
経済性、特に補助金制度の弊害が大きい。
そもそも、車道の自転車専用レーンの解釈がなく、道路法上は車道(路肩)、
道路交通法上は路側帯(歩道なし側)と、提供し管理する双方の解釈が異なり
交安上の自転車走行は本一冊になるくらい専門家でも難しくなった。
自転車の道路交通法
幹線道路の標準断面は幅員16mが必要だが、特に既成市街地の場合、
道路改良はなかなか進まない。歩道さえ確保できない通学路は多い。
嘉手納町
自転車は車道構造ではなく、二輪車路側帯を新しく構造化すべきなのだ。
構造力学的な負荷を想定すると、10トントラック1台分は、
1トン乗用車が10の4乗回通過するに等しい。
1トン乗用車1台分は、自転車が100の4乗回通過したに等しい。
補助金、マニュアル、前例から離れられない設計者は不幸だ。
むしろ、現場対応の苦労の方が痛々しくも理解できる場合がある。
現実的な改良は無理でも、管理者の解釈でできることはいくつもある。
道路の狭い市街地の道路でさえ、車道幅をきっちり3mとるより
視覚的に二輪車の通行を促すマーキングは効果的である。
エコや健康、環境問題、地域再生などを紐解く選択肢であるはずの自転車利用。
自転車バッシングや利用者の混乱を助長させる今の雰囲気はおかしいと感じる。
疑問を感じてもできなかった自戒も含め、長く広い目で見据えながら
これまでの道路環境を見直すターニングポイントになればいいと思う。
アムステルダム