沖縄に居ると、アメリカ人の求める住宅地が何となくわかるようになるが、
本国アメリカでは、どのような街が住みやすいと評価されているのだろうか。
アメリカの生活指標サイトLivability.comによる大都市を除くBest Place To Live
Top100によると、上からMadison Rochester Arlington Boulder と続くが、
その後は PaloAlto Berkeley SantaClaraとサンフランシスコ郊外の都市が続く。
マネー誌のランキングでは、全米でいち早く建築物の環境性能評価システムを
導入したダラス郊外のMckenneyが選ばれている。
いずれも、歴史的な交通の要所か、大都市近郊のブーンバーブ(急発展する郊外)
の中でも、安全で風光明媚な中規模の街が選ばれている。
特に、カリフォルニア州の海に近い丘陵部の街の人気は、相変わらず根強い。
IT革命が繁栄の限界を迎えた後の、健康な食生活とエコロジー革命の産声は、
シリコンバレーに隣接する地域から起こると読んでいる。
その一端のサリナスバレー周辺は、映画〝エデンの東〟の舞台であるが
サンノゼの郊外にあたり、今もレタス畑が広がる農耕地でもある。
この地域が、全米を巡り住みやすい地域を探してみた中では、海にも近く
不動産投資としてもポテンシャルの高い魅力的な地域であると感じた。
アメリカの住宅着工件数はリーマンショック後ジリ貧であったが、
最近は郊外の開発も行われ、ようやく回復の兆しが見えている。
しかし、不動産価格は依然低迷し、労働者向けの価格帯は日本とあまり変わらない。
アメリカは3年住み働けば永住権が取得できるため、
投資対象でなくても、居住する夢は案外近いところにある。
最も米国籍を取得したい中国の富裕層は、すでに目を付けているかもしれない。
一方で高齢化社会の到来は、アメリカの住宅地の概念を変えた。
シリコンデザート(砂漠)と呼ばれるアリゾナ州フェニックス郊外のサンシティは、
人口38,000人、高齢者の移住コミュニティとして有名で、最近は退職後に
都会を離れ、終の棲家に選ぶ人も多い。
入居条件は55歳以上、同伴家族は18歳以上、98%白人の都市である。
都市デザインは、教会を中心とした中世都市型のクラスターが組み合わされている。
都会のコミュニティに生きる、緑豊かな自然に囲まれ生きる、という従来の考え方と異なり、
暖かい陽光にあふれ、安全に平和な閉塞された住宅地が南部の荒野に広がっている。
フェニックスからLAへの飛行機で隣席した88歳の老婦人は、初めアメリカ人と思えたが
話すうちに、福島にルーツを持つ日系2世ということがわかった。
日本語も少し話され、その言葉の端端から、戦前から日系人として生きた
深い人生経験が隠されていることは容易に推測することができた。
『都会のLAも良いけど、フェニックスは暖かく住むには良いところよ。また来て下さいね。』
と言って去った後には、幸せそうな笑みだけが残った。