那覇の国際通りを歩くと、中国人観光客の多さに驚く。
前年比87%増の4万4500人が沖縄を訪れて、
そのほとんどが再訪を望んでいる。
沖縄の語学ビジネスは、中国語コースが花盛りである。
全県で19の中国語スクールがあり、それ以上に語学サークルや
在沖華人の個人レッスンも含めると相当数になる。
歴史をひも解くと、中国は琉球にとって片親の存在であった。
400年にわたる冊封使の歴史の影響は、琉球文化に多大なる影響を与えた。
首里城を見ても、唄三線でも空手でも、中国文化の影響は計り知れない。
帰省人による琉球王府時代の久米村の歴史を振り返るまでもなく、
現在の沖縄にも華僑人社会はあるが、特にまとまった街はなく、
中国文化を強烈に印象づけるのは、那覇市久米にある福州園である。
ここは近隣公園の松山公園の一部にあたる那覇市の都市計画公園である。
この庭園は、中国式庭園の魅力を凝縮させたような、
日本のどこにもない都市公園である。
那覇市と福州市の友好記念事業として1992年に開園されたものだが、
設計・資材に至るまですべて中国仕様である。
山、池、滝、塔の景観配置やデザインに、日本的な発想にない中華思想を感じる。
滝の下をくぐったり、岩山を登ったり、池に突き出た東屋などの
テーマパークのような展開や、四季の植物の配置も想定されている。
ディテールを見ると、日本ではあまり使われないデザイン窓に特徴がある。
中国本土の公園はスケール感にただ驚かされるが、細部を見落としがちになる。
台湾ではより洗練され、細部を工夫した公園はあるが、福州園はそれ以上に、
中国式を箱詰めにしたようなポケットパークである。
この日、ここを訪れた観光客は、中国人、台湾人、米国人だけであった。
日本人の文化的価値観は、世界遺産やメディアのつくるイメージに偏っている。
その一方で、国防上は中国艦艇や空軍機の接近が増え、
中国の軍事的脅威が伝わってくる。
日本人にイメージの良くない中国人であるが、
その悪影響を被っているのが台湾の旅行客である。
その違いは、公共の場での立ち振るまいを見ると大体判別できるが、
英語より日本語で話しかけるとすぐわかる。
単語の一つでも理解しようとするのが台湾の方である。
台湾は日本を片親とする、琉球と似た文化的影響があるからだろう。