エネルギ-シフトとは、化石・核エネルギーから、再生可能エネルギーへ
転換することを表す。これは同時に、大量消費型社会から、小規模・分散・
循環型の社会システムへの転換をも意味する。
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、地熱、波力、潮力、中小規模水力、
バイオマスなどを示すが、新エネルギーのメタンハイドレード、シュ―ルガス、
オイルシェールや、自然環境に影響を及ぼすダム水力発電は、通常は含まない。
再生可能エネルギーの開発は、20年以上前から欧州が先導して行っているが、
政策が先行し試行錯誤を繰り返し、実用化が徐々に実り始めている。
欧州諸国の1次エネルギーの再生可能エネルギー比率は既に10%に達している。
日本では、まだ全エネルギーの3%に過ぎず、再生可能エネルギーの
固定価格買取制度が昨年できたばかりで、研究開発費比率も低く遅れをとっている。
野村総研資料
エネルギーシフトが進まない理由は、技術的な問題と、政策的な問題と、経済的な
問題と、社会システム的な問題があり、互いに堂々巡りをしている感がある。
再生可能エネルギーの開発についても、同様の構造的な課題を抱えている。
エネルギー開発は、安心安全なエネルギー供給と、環境を維持するために、
研究開発と投資が行われてきた。
その一方で、再生可能エネルギーの安定供給に対する欠点と、
投資効率についても、その継続性に対する疑問が生じた。
次に、科学技術の進歩により対策が講じられたが、新たな騒音・振動問題や、
自然環境にも影響を与える課題が指摘された。
そして再び、エネルギー政策が議論され、投資・開発が行われる。
このように、日本では思想に芯のない場当たり的な対策が繰り返されてきた。
エネルギーシフトは、我々の生活の中で、どんな関わりを持つのであろうか。
経済的な面では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度で電気を売ったり、
安いエネルギーを選択することができる。
しかし、現実的には、イニシャルコストをランニングコストで取り戻していくには、
まだ時間が掛かり、ためらう人も多い。
個人で意識的に行えるエネルギーシフトは、車から徒歩・自転車への転換であろう。
つまり、石油エネルギーから人間エネルギーへのエネルギーシフトである。
私は自称サイクリストで、今月の沖縄での走行距離は300kmである。
市民レースレベルでも、月に1,500kmほど走行する人もいるので、
決して多い距離ではないが、これは毎日片道5km通勤する距離に等しい。
5km以内の自動車通勤者を自転車に転換した場合、
日本全体で、30万t/年のCO2を削減したに等しいという試算もある。
これはカーボン取引の約4億円分に相当する。
一個人としては、690kg/年のCO2削減の価値よりも、
7,000Kcal/月のエネルギー消費と、670g/月の燃焼脂肪量に相当するため、
健康に寄与する利点の方が大きいかもしれない。
日本は、冬の雪国、真夏の南国、強風の海岸など、自転車に適さない
自然環境も多く、自転車が慣習化されていない地域が多いのも事実だが、
安全に走れる路肩スペースさえない地域が多いのも事実である。
この個人のエネルギーシフトを実践していくためには、公共投資だけでなく、
地域での取り組み、大量消費型でない街づくり、環境づくりを始める必要がある。
エネルギーシフトは、個人の生活課題を克服し、それを実現するコミュニティの
存在があり、トータル的にそれをサポートするシステムがなければ動き出さない。