古来中国の漢方では、ちりを含んだ風の邪気により体調を崩すことを、風邪(ふうじゃ)という。
例年であれば、春の嵐が吹き荒れる頃、スギ花粉の飛来が増え、黄砂の影響と相まって
スギ花粉情報が届けられる時節であるが、今年の話題は違う。
微粒子状物質PM2.5を含む中国からの大気汚染がニュースになっている。
黄砂に含まれる大気浮遊粒子状物質SPM(粒径0.1mm以下)が問題視されてきたが、
PM2.5はさらに細かい粒径0.0025mm以下の微粒子で、
特に呼吸器系の疾患の原因となる危険性を持つ。
今年の特徴は、偏西風が南寄りで西日本の汚染が顕著になっている。
一方、北国では季節風の影響は少なく、蔵王の樹氷は例年よりきれいで、汚染度、
酸性度は低いという調査結果が出された。(山形大理学部地球環境学科柳沢研究室)
大気汚染の監視測定結果は、環境省の
そらまめ君で公開され、各自治体でも
公表されつつあるが、天気予報サイトと違いグラフィックでなくわかりづらい。
国民にとっては、環境省、気象庁(国交省)、科学技術省(原子力規制委員会)を
統括し、即時にわかりやすい危機管理サイトが必要なのである。
中国のPM2.5の危険性は、今に始まったことではない。
すでに5年以上前から指摘されているが、対応策もなく、
我が身の火の粉になってから、ようやく気が付いた状況である。
Battelle Memorial Institute : Columbia University資料
偉大な毛沢東率いる70年代の中国は、皆同じ人民服を着た自転車が
無機質に街を埋め尽くしていた。
30年後、中国は急激な経済発展と引き換えに、自転車が自動車に代わり、
工場は資本主義的生産に邁進し、都市の公害問題は深刻化している。
この様子に、日本での街頭インタビューで人々は、
“我々の昭和40年代の頃と一緒だ。”と異口同音に感想を述べていた。
5年前に訪れた雲南省昆明は、風光明美な南国高地で、
国際的にも高地トレーニングの合宿地として注目されていた。
人口600万の大都市は、高地と言えども、排気ガスの被う街で、
走ろうという気にもならず、選手達はどこで練習するのかも気になっていた。
その直後、北京オリンピックの高地トレーニングに来た選手達は、
原因不明の湿疹にかかり、野口みずき選手は出場を断念した。
昆明の滇池(テンチ)は、かつて高原の真珠と謳われた山紫水明の中国の名勝で、
ゴンドラから一望できるエメラルド色の美しい湖であった。
しかし、数分後異臭が漂い始め、息苦しく感じた。
滇池は工業排水と生活排水により汚染され、藻類が発生した緑色の排水池になっていた。
環境と生活と国威発揚のバランスの中で、この国に協力できることは何なのだろうと
暗澹たる気分になった。この環境対策に、100億円規模の日本のODAが拠出された。
しかし、この不条理な危うさと、さらなる環境悪化の懸念は、その後明白になった。
沖縄では冷たい北東の風が吹き、PM2.5の影響も本土ほどでなく、
環境基準の日平均35μg/㎥を下回っている。
スギ花粉の影響のない土地と言うことで、重症患者で避難する人もいるくらいだが、
最近気になることがある。
昨日のマラソンでは感じなかったが、走りながら灰塵を吸い込んだような感覚になることがある。
空気清浄機を設置し、室内でルームランナーを使うことが、
健康的な環境と認知される時代になって欲しくないと願う。
南中国原産のムラサキソシンカは、亜熱帯全域に広がり、花は今、沖縄で見ごろである。