アメリカの気候変動の対応と緩和

Katzu

2014年11月30日 16:56

 ABC Newsの天気予報を見ていると、4年前と大きく変わったと感じる。
以前はカリブ海のハリケーン情報と各地の天気概況と気温程度であったが、
最近は日本の台風の発達の様子まで解説していた。


台風が日本近海で熱帯低気圧になった後も、偏西風の蛇行により
ジェット気流に乗り、アメリカ中西部の平原に流れ込むようになったからである。
日本の台風の予報が、南洋の発生海域にまで広がったように、
グローバルな気候の変化は天気予報の質をも変えている。



EPA(US Environmental Protection Agencyアメリカ環境保護庁 )では、
地域を8区分し、各地域の気候変動の特徴をまとめている。



 ニューヨークを中心とする北東部は、雨量の増大と海面上昇に伴う高波の増幅による
都市洪水の危険性が増し、都市部の高温化と流入汚水のオーバーフローにより、
蚊が媒介する西ナイルウィルスの発生サイクルが生まれることが懸念されている。
果実、酪農、ロブスターなどの農漁業生産への影響も大きく、
ブナ、白樺、カエデは北上し、トウヒ、モミは縮小の傾向にある。 
冬の雪より雨の割合が増える傾向にあるが、実際は大雪被害が深刻化している。



 5大湖周辺の中西部では温暖化による湖水の蒸発により水位が下がり、
降雨量が増えると予測している。



 ディープサウスと呼ばれる南東部は、高温多湿が加速し、海面上昇、
ハリケーンにより洪水リスクが高まり、海岸線の浸食が進行していく。



河川は淡水とともに土砂を流出し洪積平野を形成してきたが、
現在は帯水層の枯渇と海水混合が同時に進行している。
気温の上昇とともに、貝類媒介の細菌が発生するリスクが増えると言われる。



 
 グレートプレーンズはロッキー山脈の東側、ミシシッピ川西部の平原地帯に位置し、
東にはさらにプレーリーの温帯草原地帯が広がる。
都市化と急激な経済成長は、気候変動の影響を強く受け、地域の脆弱性を高める。



この地域は風の通り道であるばかりか、竜巻の発生地域にもなっている。
10月はすでにその季節を過ぎていたが、近づく雲はまるで生き物のようであった。



平原の地下には、世界最大の地下水層と言われるオガララ帯水層がある。
水資源の需要の高まりで地下水位が下がる反面、降水量の増加により汚染物質も流入する。



シェールオイルはアメリカを世界最大の産油国にしたが、
その採取地はこの地域と重複し、さらなる環境悪化が懸念されている。
気候変動の影響を最も受ける弱者は、この地域の65種族のネイティブアメリカンである。



 南西部は西海岸とロッキー山脈にはさまれ、モハベ、ソノラ砂漠の中に都市が発展している。
近年の干ばつと高温によりビニョン松が枯れ、山火事も煩雑に起きている。
一方で、大都市近郊の河川では時期的な洪水リスクが高まっている。



ソノラ砂漠の雨期は2回あり、夏の雨期の7月から9月までは過去50年間で気温が1.5℃上昇し、
その一方で、降雨量は25~40%増加している。、年間降雨量は300mm(日本の1/6)だが、
9月の平均降雨量の15.5mmに対し、今年は20年ぶりに129mmのまとまった雨が降った。
気候変動は、サワロサボテンの景観を脅かしていると指摘している。



 
 概観すると、北東部はいち早く寒気団が降り大雪となり、中南部にかけては降水量が増え、
西海岸は乾燥するという傾向に加え、気候変化の振幅が大きいという特徴がある。



                                                 (詳細)
アメリカ大陸の気候区分は9区分されてきた。
この区分は、農業の産地区分とほぼ同じとされてきたが、最近は微妙に変わりつつある。



USDA(合衆国農務省)は、対応(adaptation)と緩和(mitigation)について地域ごとに示唆している。



 ワシントンDCのEPA(アメリカ環境保護庁)の庭には、都市のRain Garden建設を奨励し、
洪水調整と地下水涵養を計り、都市の洪水リスクを軽減する旨の説明書きがある。
豊かな自然と共存してきた日本では、都市緑化により自然を回復する思想が先行したが、
荒野を切り開き新しい環境を造ってきたアメリカでは、自然をマネージする考え方が先行する。





 気候変動について、排出2大国がようやくスタートについたが、最低10年遅れた感がある。
今回のLIMA COP20の取り組みが世界的に進む望みは薄いが、1997年の京都会議のように
日本が主導的な役割を果たすどころか、逆に後退してしまったことが残念である。


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