雪国で見る虹

Katzu

2016年01月11日 19:46



正月に虹を見たという記憶がない。
虹の条件は雨と太陽だから、厳冬期の雪国では望むすべもない。
時雨虹(しぐれにじ)というのは俳句の季語になっているように、
晩秋に見られる虹を指すが、北国では12月の雨は氷雨となり、
曇天の下ではやがてみぞれに変わる。
雨が夜更け過ぎに雪へと変わるクリスマスイブも、
卒業間近のなごり雪も都会の話とばかり思っていたが、
近年は地球温暖化の影響で雪国にも当てはまるようになった。



今年の山形の正月は13年ぶりに雪がなかった。
平均気温は23年ぶりに5℃を超えた。
庭に咲く食用菊の『もってのほか』は晩秋に収穫するが、
正月を過ぎてもまだ咲いていた。




暖かいというのは嬉しくても、雪がないと年を越した気がしない。
雨のぱらつく元旦も白々と過ぎ、2日に山の神に初詣でする。
すすきの川原の向こうに、神社のある山頂にかけて虹が掛かっていた。




昔スキー場だった道路わきの参道からトレイルランナーが駆けてきた。
山の神社は昔のまま静かで、奥の孝道院はよく見ると比叡山系で、
山の中の五色仏旗はチベット仏教を思い出した。
幼児期に遊び親しんだスキー場は、地球温暖化を待つまでもなく、
いつの間にかなくなり周囲は宗教の山になった。




山頂まで新年詣出にくる参拝客は、健康な年配者ばかりで
日々の散歩に訪れているのだろう。



古峯神社から眺めると、街の発展が良く見える。
バイパスが通ってからは山での騒音が気になるようになった。



雨と晴れ間が繰り返され、街の中からまた虹が立ち上がった。
中世の日本では、虹の立つところに市が立つ習わしがあった。
世界各地では、虹は蛇に例えられることが多い。
中国では虹は、龍が現れる不吉の証しとされ、
虹が虫へんであるのは、蛇の一種であるためとされる。



ハワイではダブルレインボーは幸福の証しとされるが、
さらに雨の多い南洋のパラオでは虹は日常的に見られ、
何度もその神々しさに手を合わせたくなった。
雨がようやく東から島を通り過ぎ、南からの太陽を背に受け、
北に立ち上がる虹を見ると、自然に感謝したい気持ちになる。




故郷のアベマキの山道を散歩するとよくリスが現れた。
木にビスケットがあるところを見ると今も生息しているのだろう。
アベマキはドングリの一種で東南アジアから東アジア全般に
広がっているが、山形県が最北端の地域とされる。
開発や温暖化の影響の中で残された、この貴重な森を認識している市民はどれだけいるのだろう。



昭和40年代、山を削りバイパスを市街地近くに通したことにより、
故郷の里山景観は失われ、街は渋滞し道路システムも変わった。



今思えば、トンネルにするかルートを西に変えればよかったはずだが、
現在も地方計画の進め方は、旧建設省時代から何も変わっていない。
当時計画に異を唱えたのは、トンネルルート上のぶどう畑農家と
現ルートに変更されてからは少数の自然保護団体だけだった。




雨の山を降りると晴れ上がり、トンネルルート上の当時の
ぶどう畑付近からは、うっすらと、また虹が立ち上がっていた。

気象の振幅が大きくなると、虹が出る機会も増えると考えられるが、
虹の出る証しは吉か凶か、どちらに傾くのだろう。


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