2012年01月14日
銀河鉄道の夢

宮沢賢治の童話作品「銀河鉄道の夜」は、岩手軽便鉄道がモデルと言われ、
現在のJR釜石線は銀河ドリームラインと呼ばれる。
三陸鉄道北リアス線の田野畑駅は、カンパネルラ駅と呼ばれている。

カンパネルラ駅には列車はまだ来ない。
でもこの駅には寄付された燃料で暖炉が焚かれ、
ボランティアがまだ来ない列車のために駅を維持管理している。
その方は津波で親を流された羅賀の民宿の女将であった。

孤独な少年ジョバンニが友人のカムパネルラと旅する物語は、
幻想的かつ啓示的な不思議な童話で、昔からずっと気になっていた。
宮沢賢治は理系の文学者で測量の専門でもあるが、
天文学も詳しく、天空を描いたという解釈もある。
この童話を読み直して、改めてわかったことがある。
故郷を愛する彼は、自分の幼児期と、この地方の将来の暗闇を見つめて
この作品を書いたかのような印象を受ける。

島越のカルボナ―ド駅は、同じく宮沢賢治の
「グスコーブドリの伝記」から名付けられた。
この童話は現代の地球環境問題を占ったような作品でもあるが、
この駅は火山ではなく、津波によって失われた。
残された駅前広場の石碑がそのすべてを語っている。

三陸の人達の話を伺っていると、鉄道がいかに地域を結ぶ
精神の支柱であることがわかる。
生活の移動の中心は車だが、線路がなくなったことに対して、
大きな不安と衝撃を今も受けている。

宮沢賢治の鉄道に対する夢が、あの作品を作り、
三陸の人々は今も同じ思いを持ち続けている。
人々の心は、銀河鉄道に乗り、溺れた友のカムパネルラや亡くなった母、
船で遭難した人に会いに飛び立ったような、そんな思いに駆られる。

※ 国交省は3次補正で三陸鉄道復旧の予算が組まれ、
北リアス線は、春までに久慈駅から田野畑駅までの開業を目指している。
第3セクの三陸鉄道は、被災レールの販売など、営業努力を始めている。
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Posted by Katzu at 04:21│Comments(0)
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