2013年02月24日

甦るマングローブ

 亜熱帯沿岸のマングローブ林の減少は、全世界の失われた森林により増加した
CO2の10%に当たると言われている。1980年以降全世界で約20%減少しており、
地球温暖化対策として多くの再生保護活動が世界規模で進められている。

甦るマングローブ

マングローブ林は亜熱帯の汽水域の泥質地に生息するヒルギ、ヒルギダマシ、
ヒルギモドキ類の混合林であるが、林の中は意外にすがすがしい。
静かな森は、ポタンと木の実が落ちる音しか聞こえない。
とげのような木の芽は、落ちた種のように見えるが、じつはつながった木根である。
伐採さえしなければ、このマングローブは実にたくましく成長する。
大洋州の島々でも、埋立道路近くの海中でも、すぐに新しく芽が出始める。

甦るマングローブ

 沖縄では、自然のマングローブ林は希少になっているが、
再生保護活動とともにその地域は広がり始めている。
その一つの理由は、地球温暖化によりマングローブの北限が北に移動し、
沖縄でも育ちやすい環境に変わってきたためである。

甦るマングローブ

中城湾新港公有水面干拓事業は、昭和58年から干潟を埋め立て、
沖縄市とうるま市にまたがる180haの宅地を生みだした。
未利用地を多く含む工業系土地利用計画は、土地の担保に終わり必ずしも
成功したとは言えず、新たな泡瀬干潟埋立が進行してしまったことは残念である。

甦るマングローブ

 その一方で、現在は干潟が埋め立てられたために泥がたまり、
マングローブ林が生成されやすい環境になった。
外周の緑地とわずかに残る海水路では、植生の再生も試みられており、
ヒルギ類が芽生え始めている。美しい干潟が失われたかわりに起きた皮肉な
結果であるが、新たな効果も生まれている。

中城湾干拓地は津波対策が全く行われていない計画地であるが、災対策としての
マングローブ林整備が大きな効果を生むことは、スマトラ沖地震で解明済みである。
誰も利用していない広大な近隣公園を造るより、あと10m広く沿岸に緩衝緑地を造るべきだった。
現在埋立中の泡瀬干潟の津波対策(宅盤高)、緑地計画はどうなっているのか心配になった。

甦るマングローブ

現在行われている沖縄の米軍港跡地の土地利用転換計画は、
ビーチ開発ではなく、マングローブ林の再生がキーワードである。

那覇の漫湖でも中城湾同様にマングローブ林が発達し、
ジョギングコースになっているこのエリアでは都市緑化の役割を果たしている。

紅海沿岸では防砂・防風・流砂対策としてマングローブ林の植生が試みられている。
グローバルに考えると、再生する都市のマングローブ林は、開発途上国で失われる森林に
対抗することのできる、限られた都市のエネルギーとCO2を抑制する対策の一つである。

 イオンショッピングセンター正面の海水路に、1本のマングローブが根付いているのを見ると、
パラオの開発担当課に、1本のマングローブも切らせないと駆け込んできた、
ある米人の弁護士のことを思い出していた。

甦るマングローブ



同じカテゴリー(街の環境)の記事
北と南の生活比較
北と南の生活比較(2017-02-11 00:18)

ブラジルのサクラ
ブラジルのサクラ(2016-08-07 18:57)

沖縄の鉄軌道計画
沖縄の鉄軌道計画(2015-05-29 13:39)


Posted by Katzu at 03:14│Comments(0)街の環境
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。