2014年04月23日
景観の価値と値段
良い景色には人が集まる。
その景色に惚れ込み住みついた人もいる。
良い景観の土地は不動産価値が高くなる。
その価値と値段はどう評価するのだろう。
景観の価値を決める要素
深田久弥の日本百名山で、唯一有名でなかった荒島岳の選定は、
里山景観と彼の故郷の山であるからと言われた時期があった。
選定には山の品格、歴史、個性といった基準で選ばれたと言われるが、
他に候補からはずれた全国的に有名な山には、戸隠山、黒姫山、榛名山、
妙義山、八海山、鈴鹿山、雲仙岳、由布岳などがあった。

景観の要素は単純で、空間、形状、色彩のバランスにより決まる。
例えば広い空間に四角く赤いものがあれば、ただ強烈な印象を与える。
ここに大きく影響するものが、時とともに移ろい行く風景体験である。
日本全国、郷里の風景にはこのような山が存在する。
ただ、その風景がフィードバックしてくるのは、諸行無常と花鳥風月の美意識が
微妙にシンクロする年齢にならないと理解できないかもしれない。
亡くなった叔父は、郷里の雁戸山に夕日が当たり真っ赤に染まる風景を
もう一度見てみたいと語っていたのを思い出す。

景観の価値を高めるもの
全国景観シンポの時に湯布院の景観計画に関するプレゼンがあった。
担当者は観光振興のイメージ戦略の一つに、二百名山となった由布岳の景観をあげた。
普段目にする景観が、そこに住む人にとって魅力ある景観であることに気付かないことは
よくあるパターンで、その魅力は外からの視点によりもたらされることが多い。
街並みづくりの努力とともに、故郷の山の景観がまちの価値を高めた好例である。

日本の郷里の山には、集落と自然が一対になったような景観はたくさんある。
名護の久志は海沿いの集落で、海から続く各筋からは端正な久志岳を望むことができる。
住み人にとっては、日常意識することはなくても、1枚の写真を見れば
その景観を台無しにしているもの、景観の価値を高めるものは何なのかがよくわかる。

景観を阻害するもの
ゴーギャンはタヒチの景観に惚れ込み移り住んだと言われているが、南洋の
青い海と白い砂浜、山の組み合わせの景観は世界中に絶景として存在する。

しかし、これに都市的景観がプラスされた都市は意外に少ない。
そんな数少ない都市は名護である、と言うと、恐らく多くの人は
驚くと言うよりむしろ笑ってしまうだろう。
しかし、景観だけの要素をひも解けば、タヒチとの違いは、彩度や
コテージを除けば、景観を阻害するものの違いであることに気が付く。
それは街の雑多な形状の建物、土木構造物、採石場として削られた山の不自然さである。

パラオの都市計画委員会でのプレゼンでは、よく景観阻害の写真を出した。
継続的観光が必要不可欠な島国は、すでに景観維持が必要な段階に入っていた。
観光地としてのパラオとタヒチの違いを知ってもらう必要があった。
景観を阻害するものの中には、マングローブを切り開いた水上コテージ、電線、
箱型のホテル、ソーラーパネルに混じって採石場の崩れた島の山並みがあった。

期待に胸を膨らませてロックアイランドに向かう観光客には見せたくない風景でもあった。
委員の多くは景観の価値を十分理解してない様子であった。
その時は『それがいくらの価値があるのか。』という質問を一番恐れていた。

景観の値段
景観の価値は、土地の鑑定評価においてはどれだけ上乗せされるのだろうか。
区画整理の土地評価基準を例にとると、評価方法は路線価に基づく画地評価を行うことから始まる。
その路線価は、街路係数、接近係数、宅地係数により決まる。
街路修景が良好な場合や歩行者専用道には街路係数に0.05付加され、自然環境が良好な場合には
宅地係数に0.2付加される条件があるが、限定的であり景観の総合的な評価は付加されていない。
これらの条件を加味しても、景観関連の増分は数%程度にとどまるであろう。
土地評価基準は全国ほぼ同じなので、詳細は地域の事業の基準を参照すると
その土地の価値を決める基本的な構成を理解することができる。
那覇市土地区画整理事業土地評価基準
景観を経済価値としてとらえる方法は、ヘドニックアプローチ法やCVM法、
旅行費用法などがあるが、公的にオーソライズされたものはない。
新しい土地に関する専門家が行う土地鑑定でさえ、近隣の路線価と
売買事例との距離按分により求めているのが現状なのである。
ある地区の景観規制に関するアンケートでは,景観を維持するために支払い可能な費用は
月に300~500円程度であるという調査結果が得られた。
全国平均家賃を5万円すると、良い景観を維持する価値はたった1%ということになる。
しかし現実的には、ホテルのオーシャンビューとマウンテンビューの違いのように、
5割も上乗せされている不動産売買事例もある。
最終的には不動産価値は利用者がその価値を決めることになるが、
公的事業ではこれを認めることができない。
その景色に惚れ込み住みついた人もいる。
良い景観の土地は不動産価値が高くなる。
その価値と値段はどう評価するのだろう。
景観の価値を決める要素
深田久弥の日本百名山で、唯一有名でなかった荒島岳の選定は、
里山景観と彼の故郷の山であるからと言われた時期があった。
選定には山の品格、歴史、個性といった基準で選ばれたと言われるが、
他に候補からはずれた全国的に有名な山には、戸隠山、黒姫山、榛名山、
妙義山、八海山、鈴鹿山、雲仙岳、由布岳などがあった。

景観の要素は単純で、空間、形状、色彩のバランスにより決まる。
例えば広い空間に四角く赤いものがあれば、ただ強烈な印象を与える。
ここに大きく影響するものが、時とともに移ろい行く風景体験である。
日本全国、郷里の風景にはこのような山が存在する。
ただ、その風景がフィードバックしてくるのは、諸行無常と花鳥風月の美意識が
微妙にシンクロする年齢にならないと理解できないかもしれない。
亡くなった叔父は、郷里の雁戸山に夕日が当たり真っ赤に染まる風景を
もう一度見てみたいと語っていたのを思い出す。

景観の価値を高めるもの
全国景観シンポの時に湯布院の景観計画に関するプレゼンがあった。
担当者は観光振興のイメージ戦略の一つに、二百名山となった由布岳の景観をあげた。
普段目にする景観が、そこに住む人にとって魅力ある景観であることに気付かないことは
よくあるパターンで、その魅力は外からの視点によりもたらされることが多い。
街並みづくりの努力とともに、故郷の山の景観がまちの価値を高めた好例である。

日本の郷里の山には、集落と自然が一対になったような景観はたくさんある。
名護の久志は海沿いの集落で、海から続く各筋からは端正な久志岳を望むことができる。
住み人にとっては、日常意識することはなくても、1枚の写真を見れば
その景観を台無しにしているもの、景観の価値を高めるものは何なのかがよくわかる。

景観を阻害するもの
ゴーギャンはタヒチの景観に惚れ込み移り住んだと言われているが、南洋の
青い海と白い砂浜、山の組み合わせの景観は世界中に絶景として存在する。

しかし、これに都市的景観がプラスされた都市は意外に少ない。
そんな数少ない都市は名護である、と言うと、恐らく多くの人は
驚くと言うよりむしろ笑ってしまうだろう。
しかし、景観だけの要素をひも解けば、タヒチとの違いは、彩度や
コテージを除けば、景観を阻害するものの違いであることに気が付く。
それは街の雑多な形状の建物、土木構造物、採石場として削られた山の不自然さである。

パラオの都市計画委員会でのプレゼンでは、よく景観阻害の写真を出した。
継続的観光が必要不可欠な島国は、すでに景観維持が必要な段階に入っていた。
観光地としてのパラオとタヒチの違いを知ってもらう必要があった。
景観を阻害するものの中には、マングローブを切り開いた水上コテージ、電線、
箱型のホテル、ソーラーパネルに混じって採石場の崩れた島の山並みがあった。

期待に胸を膨らませてロックアイランドに向かう観光客には見せたくない風景でもあった。
委員の多くは景観の価値を十分理解してない様子であった。
その時は『それがいくらの価値があるのか。』という質問を一番恐れていた。

景観の値段
景観の価値は、土地の鑑定評価においてはどれだけ上乗せされるのだろうか。
区画整理の土地評価基準を例にとると、評価方法は路線価に基づく画地評価を行うことから始まる。
その路線価は、街路係数、接近係数、宅地係数により決まる。
街路修景が良好な場合や歩行者専用道には街路係数に0.05付加され、自然環境が良好な場合には
宅地係数に0.2付加される条件があるが、限定的であり景観の総合的な評価は付加されていない。
これらの条件を加味しても、景観関連の増分は数%程度にとどまるであろう。
土地評価基準は全国ほぼ同じなので、詳細は地域の事業の基準を参照すると
その土地の価値を決める基本的な構成を理解することができる。
那覇市土地区画整理事業土地評価基準
景観を経済価値としてとらえる方法は、ヘドニックアプローチ法やCVM法、
旅行費用法などがあるが、公的にオーソライズされたものはない。
新しい土地に関する専門家が行う土地鑑定でさえ、近隣の路線価と
売買事例との距離按分により求めているのが現状なのである。
ある地区の景観規制に関するアンケートでは,景観を維持するために支払い可能な費用は
月に300~500円程度であるという調査結果が得られた。
全国平均家賃を5万円すると、良い景観を維持する価値はたった1%ということになる。
しかし現実的には、ホテルのオーシャンビューとマウンテンビューの違いのように、
5割も上乗せされている不動産売買事例もある。
最終的には不動産価値は利用者がその価値を決めることになるが、
公的事業ではこれを認めることができない。
Posted by Katzu at 17:00│Comments(0)
│環境デザイン
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