2014年11月12日

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

 インディアンと呼ばれてきたネイティブアメリカンはアメリカ先住民と訳され、
日本ではインディアンを差別用語としてとらえる傾向があるが、アメリカでは先住民に
エスキモー、ハワイ人を含むため、正式名アメリカンインディアンとして認識されつつある。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

アメリカンインディアンはチェロキー、チカソー、チョクトー、クリーク、セミノールの
開花5部族を中心に10種の言語を持ち、独自の文化を築いてきたが、
1500万人居た人口は現在の247万人にまで減っている。(2,000年国勢調査)

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

現在、アリゾナ州、ニューメキシコ州を中心に各地に居留地がある。
少数民族の悲劇で、各部族はゴールドラッシュ、オイルラッシュ、ウラン発掘、
マンハッタン計画などアメリカの発展とともに、その都度強制移動が繰り返され、
最後の居留地域は核実験場が行われた核廃棄処理施設に近い地域となった。
自然の事象を最も尊ぶ民族に、最新科学のゴミの環境があてがわれた何と言う悲劇だろう。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

最も悲劇的なのは、チェロキー族の涙の旅路と呼ばれるゴールドラッシュによる強制移動で、
ジョージアからオクラホマまで1000km、冬の徒歩移動で7割が亡くなっっている。
アメリカ近代史の中での最大の負の遺産で、長い間繁栄する過程において、
地方ナショナリズムと議会制民主主義を正義とする社会の中で顧みられることはなかった。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

 彼らが注目されるようになったのはつい最近のことで、ネイティブアメリカンとしての
生活文化が見直され、真のアメリカのアイデンティティとして認識されたからである。
彼らは自然の地物を崇拝し、気候と連動した獲物増減が起きないようにサンダンスにより神に祈る。
抑圧された結果生まれた死霊と交歓するゴーストダンスや、タバコの弊害など負のイメージが先行したが、
エコロジーの視点やジュエリーアートなどのデザインブーム、パワースポットブームが注目された。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

 国立のアメリカンインディアン博物館がようやく開館されたのは2005年のことで、
スミソニアン学術協会がどのような解釈と展示をしているのか興味あることだった。
施設はワシントンDCの国立公園ナショナルモールの一角にある。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

スミソニアンの施設は国立自然博物館、国立航空宇宙博物館、国立アメリカ歴史博物館を始め、
18の無料の博物館施設があり、各種セミナーも開かれている。
アメリカの豊かさと知識の集約にただ驚くばかりで、当初の計画では1週間以上通う予定であった。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

博物館はアメリカンインディアンの伝統的建築アドべをイメージした、
自由曲線を活かした印象的なデザインの巨大建築物である。
警備の厳しい入口から入ると、中心の吹き抜けの巨大空間に2度驚いてしまう。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

展示内容は先住民の生活様式や歴史、文化を紹介するものだが、
人間を博物化することに最大の注意を払い、詳細を冷たく分類展示するだけではない。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

家族向けのアクティビティやショップ、シアターなど子供にも飽きさせず興味を持たせ、
大人には映画や各種プログラムなどで考えさせる工夫がすばらしい。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

肝心なアメリカの負の遺産ともいうべき歴史の検証のコーナーは、
端々とTreaty(条約)という表現で繰り返し説明されている。

ウディ・ガスリーの我が祖国(This land is your land)は第二の国歌とも言われたが、
最近聴かれなくなったのはインディアンの土地囲い込みを想定させるためかもしれない。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン

1%の入植者が99%のインディアンの土地を手に入れたアメリカ社会は、現在は
1%の高額所得者が99%の低中級所得者の上に立つ超格差社会に移行したにすぎない。

ネイティブアメリカンとしてのアメリカンインディアン


しかし、少数民族となった1%のネイティブアメリカンが、アメリカのアイデンティと
未来のカギを握っていることを知る日は近いかもしれない。



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