2014年11月22日

人が流れる国境の街

 テキサス州エルパソとメキシコ・チワワ州のシウダーファレスは、国境のリオグランデ川を挟んで接する。
歴史的にはスペイン、メキシコ領の時代を経て、現在は合わせて200万人の都市圏を形成している。
国境の街は人と物と欲望が交差する。メキシコとアメリカの経済格差は、全米で2番目に安全な街と、
戦争地域を除けば世界で2番目に危険な街という対比を生んだ。

人が流れる国境の街

 エルパソの街は光にあふれ、スペイン語が街に氾濫する美しい都市である。
駅から1kmほどメキシコ人の買い物客に混じり南に歩くと、国境のリオグランデ川にたどり着く。

人が流れる国境の街

川を見るだけだったが、途中50円位払いパスポートを見せた所が入国管理だった。
意図せず、いつの間にか入国してしまったのはこれで3度目である。
リオグランデ川は水量も少なく、コンクリートの都市下水路と同じで興を削がれた。

人が流れる国境の街

 シウダーファレスには、1泊で歯医者に行く予定だったがあきらめていた。
サンタフェ駅で出会ったシウダーファレス出身の学生は、こうアドバイスしてくれた。
『行かない方が良いです。もし行くなら荷物は持たずすぐ引き返して下さい。
 僕が帰省する時はバッグは前に抱え、いつも親に車で迎えに来てもらいます。』

人が流れる国境の街

故郷の街をこんな風に語らなければならないのは、可哀想な話であるがこれが現実だと知った。

人が流れる国境の街

シウダーファレスは一見、中南米のどこにでもあるような街であるが、
一昨年までは麻薬抗争で1日平均10名も亡くなる世界一の犯罪都市であった。
交差点でたむろする人の視線を感じ、すぐに退散した。

人が流れる国境の街

アメリカ出国側は買い物帰りで多いはずなのがガラガラで、
アメリカ入国側は自動車の大渋滞で、入国審査には自転車レーンもあった。
人口が流入する現場を見る思いであった。
外国人の審査は緩いのか荷物チェックもなく、ESTAのチェックもなかったようだ。

人が流れる国境の街

 アメリカの移民は毎年増え続け、2011年には4,000万人に達し、4人に1人が不法移民とされる。
ヒスパニック人口は増え続け、LAでは既に人口の約50%を占めている。
特にメキシコ移民は毎年10万人規模で流入し続け、メキシコからの不法移民は、
アメリカ国内で665万人と言われる。(US国土安全保障省)
一方、メキシコ国境付近では越境時に毎年200名ほど死亡し監視も強化されている。

人が流れる国境の街

 翌日、Grey Hound Busでエルパソからフェニックスに向かう途中、
ツーソン付近で検問があり、警察官が2人乗り込んできた。
メキシコ人はパスポートと就労許可証がチェックされる。
パスポートチェックは入国審査以上に長く時間がかかった。

人が流れる国境の街

主要駅構内では麻薬犬で荷物をチェックしていた。
国境の水際だけでは不法移民や麻薬は食い止められず、
フェンスや塀で国を区切るものも国境ではなく、本当の国境は違う所にある。

人が流れる国境の街

アメリカの人口は移民により毎年200万人増え続け、EU各国は移民政策により横ばい、
移民政策のない日本は減少に転じた。GDPの増減も同じ結果となった。

 急激で過度な移民は社会問題を引き起こす一方で、経済社会を安い労働力で下支えGDPを
押し上げる側面もあり、人口減少社会の日本には、バブル期のような国民の尻を叩く成長戦略より、
母数を増やす合法移民を多く受け入れる方が、グローバル社会に向かう現実的な対応になるだろう。

人が流れる国境の街

国境の川の流れは止められても、欲望と人の流れは止めることができない。


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Posted by Katzu at 20:23│Comments(0)街の環境
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