2016年03月09日
少数民族の守り継ぐ環境

ミャンマーは、半数以上を占めるビルマ族を中心に8つの部族に分かれ
135に及ぶ民族が住むと言われている。今なおカチン族の独立軍との
紛争は続き、ワ族、シャン族の一部、ロヒンギャ族などの火種は残る。

シャン州都タウンジーから東にあるカックーは、2000年に公開され
2500を超える仏塔と寺院がパオ族の精神的な支柱となっている。

パオ族は龍の母と超人の父から生まれたと信じられている。
渓谷の赤い大地はニンニクやタバコなどの作物で覆われていた。
この周辺の山の頂上や奥の集落には立ち入れないと言われた。

パオ族の住居は高床式の竹造りが多く、ブロック造もあるが
双方とも窓が少ない。埃が多く朝夕の温度差が激しいためだろう。

一方、人口20万のタウンジーは近年、農村からの流入が激しく、
山の稜線まで住宅地が広がり、あまり良い住環境とは言えない。

北シャン州のティーボー郊外のシャン族の集落に行った。
川沿いの1本道の先々には、10mほど離れて農家が
1kmほど連なる集落になっている。

街の集会場には御神木と小さな学校と生活売店がある。
住居は洪水に備えた高床式の木造であった。

集落の南側はマイイットン川で船着き場のある家もある。
中には街に通勤するものもいるが基本的に農業を営んでいる。

村の人は全員顔なじみだが、外来者に対する警戒感はさほどなく
みんな気さくに笑顔であいさつしてくる。

アブラナの花がきれいな春の趣きは日本の農村によく似ている。
派手さも賑やかさも観光資源もないが、ゴミも目立たず、
すべての環境が一体となった平和で豊かな農村であった。

一方、商業集積のある中心市街地はほこりっぽく、乱雑で
うるさく臭く汚いという、全く対照的な環境の街であった。
村は家の個と集落の公の関係が非常に密で、街は公私混合の
他人任せの欲を満たす場所という構図が浮かび上がる。

シャン州と接するタイ北部、標高1600mの山間集落メーサロン。
ここは山岳民族のシャン族系のアカ族、ラフ族の多い地域であるが、
中国共産党に敗れた国民党が住み着いた村としても有名である。

山村は芽吹いた茶畑と満開の山桜が美しく、お茶の栽培は村の
経済と景観を構成する重要な要素として山岳民族とも溶け込み、
雲南省の少数山岳集落を彷彿させる雰囲気さえある。

ミャンマー、タイ、ラオス、中国国境地帯は大麻栽培の中心地であり
長らく地域全体の収入源となる一方、歴史的に利権の紛争も絶えず、
少数民族は生活、健康、地位の低下を強いられてきた。

日本政府は少数民族の和解と生活改善のためのODA事業を
進め、近年は民間のNPO活動も盛んに行われるようになった。

少数民族が守り暮らしてきた環境とは、民主国家権力の及ばない地域で成り立つというマイナスの側面と、部族の伝統を引き継ぎ平和で豊かな暮らしを続けたいというプラスの側面を持ち、現在の貴重な環境を残してきたと言える。

Posted by Katzu at 17:32│Comments(0)
│アジア
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