震災復興計画その5

Katzu

2011年04月15日 03:14

被災状況からまちを類型化する。
 被災地をまわり感じたのは、地区によって被災状況が全く異なることだ。
建物がほとんど無くなった地区をひと山越えただけで、全く津波の影響のない集落に出会う。
運命を分けたのは、地形条件と、まちの構造形態と、人と集落と歴史のあやなす必然性であった。

全体の被害の特徴をランダムに列記すると

自然条件
1.リアス式海岸で、島影のない溺れ谷での津波が高く、被害も最も大きい。
2、湾口の狭い地域の被害は1に比べ小さい。
3、松島湾の被害は少ない。
4、砂浜近くの集落の被害は大きい。
5、津波の河川遡上は10km以上に達し、破堤により浸水エリアが拡大した。
6、三陸北部の海浜段丘の被害は少ない。

社会条件
1、高台への避難のスピードが絶対条件である。
2、避難指定場所が被災した個所も多い。
3、避難訓練、防災教育など集落単位で取り組んだ効果があった。
4、神社仏閣、墓地などが比較的残った。
5、防潮堤への過信があった。
6、海上に船舶で逃れ助かった人もいた。
7、集落の言伝え、津波経験が活かされた。

構造条件
1、新しい防波堤は多くが壊れたが、減衰の効果はあった。
2、古い防波堤、嵩上げ防潮堤は破堤した。
3、重力式の傾斜防波堤は残った。
4、耐震設計による土木構造物は残った。
5、残った建物はRC造が多いが、転倒した建物もある。
6、防潮林はほとんど壊滅した。
7、漂流防止に役立った木、復興シンボルとして残った木もある。
8、貞山堤は残り、漂流物が滞留した。
9、海中の養殖施設は多くが壊滅した。

 以上を踏まえ、課題を抽出し計画の方針を立てるためには、
地域特性により、計画の前提条件が大きく異なってしまう。
今回の被災対象は東日本全土に及ぶが、特に津波の被害が大きい地域は、
福島県いわき市から青森県八戸市までの約400kmの広い範囲に及ぶためである。

 各被災市町村ごとに推定死者行方不明者数、津波高、防災構造物の有無、海底地形条件、
平地条件、地域防災を判定要素にして被災状況を類型化する。

 
 市町村別の被害者数を見ると、人口の集中している石巻市、
陸前高田市、気仙沼市、名取市、宮古市の順で多い。
被害者数と津波の高さの相関はない。

 ※赤線は死者不明者計、棒グラフは津波高
 


 
人口当たり割合では、女川町、大槌町、陸前高田市などリアス式海岸沿いの
町の被災率が高く、被害が局地的に起きていることが分かる。

 ※赤線は町の人口あたりの被害者割合、棒グラフは津波高
 

 

 被災者の死亡率は同じ南三陸の集落に加え、名取市、塩釜市、相馬市
などの都市も高い。

 ※赤線は浸水地域内の被害者割合、棒グラフは津波高


 
 全体的に津波の高さとの相関関係はなく、北三陸の海浜段丘部は被害が少ない。
 
 被害の概略をまとめると、以下の4タイプに分類される。

A.南三陸のリアス式海岸の溺れ谷部で、地形上の津波のエネルギーは甚大であった。
B.地形の緩やかな砂浜地帯で、広い範囲に遅い速度で津波が押し寄せた。
C.都市部の比較的新しい開発が行われた地域で、火災等、都市災害の様相を呈した。
D.三陸北部の海浜段丘地帯であるが、過去の教訓も生かされ被害は他地区にくらべ少なかった。 

各地区の整備方針は、フィジカルな条件を加え整備計画を考えてみたい。

 大震災から1カ月、ようやく政府の復興構想会議が始まったが、単なる方針だけでない、
具体的な方策を示して欲しいものだ。

関連記事