震災復興計画 その25

Katzu

2012年03月19日 23:18

 高台移転を決めた市町村は、岩手・宮城両県で20市町村、
200地区、1万9,000戸に上る。
この内、住民の合意形成が行われたのは3分の1であるという。
地盤嵩上げの地区は40地区あり、意見が二分している市町もある。
生活様式の違う都市部であればあるほど、
その選択肢は個人差があり合意形成は難しい。

 岩手県では高台移転の方針を打ち出した集落が多い。
その理由は、過去の津波の歴史を振り返ると、同じ選択を繰り返してきたことや、
背後に海岸段丘があり、近く安全な平地に開発適地が望めるためである。
課題は開発後の住宅建設負担と、漁業関連施設の嵩上げ工事が進まないことだ。

 宮城県では、都市部で意見の集約が進まない地区もあるが、
これはある程度想定されたことである。
むしろ、個人の発想に偏らない将来計画に、これから時間をかけて
議論を重ねていくことが大切であろう。

 両県にくらべ、放射能汚染のある福島県では、
さらに市街地整備の道筋が遅れている。
集落移転の方針が決まったのは6市町、50地区、2600戸に留まっている。

 この1年で復興庁もようやく始動し、国交省の防災集団移転促進事業(防集事業)と
津波復興拠点整備事業、被災市街地復興土地区画整理事業が拡充された。
農水省は漁業集落防災機能強化事業(漁集事業)を拡充した。


           事業イメージ 毎日新聞

 東日本大震災の被災地の市街地整備事業の運用についてはこちら

これらを、震災2カ月後に事業手法の拡充を望み、
このブログで提案した復興計画案と照合してみたい。

         
                 詳細はこちら 

 Ⅰ型の機能更新型は主に、三陸海岸の市町村が対象であるが、
漁集事業か防集事業の移転促進区域先行型がこれに該当する。

Ⅱ型の機能集約型は、背後避難地のない都市部の計画であるが、
防集事業の災害危険区域先行型か被災市街地復興土地区画整理事業が該当する。

Ⅳ型のインフラ整備型は、背後避難地のある漁業の町村であるが、
今回の津波復興拠点整備事業がこれに該当する。

このように、対象市町村の違いはあるが、1年たって
ようやく当初想定した街づくりは動き始めた。
ただし、金と物が動くシステムがまだ機能していない。
国交省から景観と環境に考慮する復興街づくりが提案されたが、
多くの人の意識がそのレベルまでには到達していない。

                         景観・都市空間形成の基本的考え方はこちら


          詳細はこちら
 残った整備課題はタイプⅢ型の都市整備型である。
特に福島の多くの市町村がこれにあたる。
広範な被災エリアを抱える意味では区画整理事業が妥当であり、
集落移転の防集事業も可能であるように思える。

しかし、この拡充された震災復興補助事業でも対応できない。
それは汚染された現況宅地があるからである。
適正な宅地評価と将来土地利用が決まらなければ、
防集事業も区画整理事業も成り立たない。
新しい事業スキームが必要である。

と、1年前にも同じことを書いたが、誰も動こうとしない。

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