震災復興計画その7

Katzu

2011年04月20日 17:00

社会条件からまちを想像する

津波史研究と津波教育

 
 私は土質、地球物理の専門家ではないので、
現在は地震、津波に関する本を読み直している。
その中に山下文男著の「津波TSUNAMI」という
本がある。

 氏は三陸出身で、自らの昭和三陸津波の体験
をもとに、津波教育を進めてきた津波史研究家である。

驚いたのは明治三陸津波の被災状況が、
今回の津波とよく似ている点だ。
明治三陸津波とは、明治29年に起きたマグニチュード8.5で、今回の津波の死者数とほぼ同じ、
2万7000人の命を奪った地震である。
その傾向は、地域ごとの津波高さや、被害者の年齢構成などに同じ傾向が見える。

 
 しかし、地域ごとの被害者数をみると、今回の被災地と明治地震の被災地は必ずしも一致しない。
むしろ逆の性向を示している。



 これは被災地の人口が非被災地に流出し、今度はその古い市街地が被災したためと考えられるが、
むしろこの違いは防災教育、防災意識の違いではなかったのか。
被災者のインタビューでは、「油断していた」という意見が圧倒的である。
地震の知識経験を風化してしまわない教育の大切さと、災害工学は経験工学であることを強く感じる。

 地震予知や地震工学、防災工学に関する本よりも、本書の方がはるかに多くの真実を語っている。
この本の出版は1997年であるが、今回の震災後に書かれたような錯覚すらおぼえる。

緊急地震速報以外の地震予知など必要ないのではとさえ思えてしまう。
 一方、経験にもとづくデマや迷信、風評は科学的に解釈し、
払拭しなければならないと本書は指摘している。

山下氏は87歳であると思われるが御無事でおられることを祈りたい。

意識調査
 新しいまちづくりを進めるために、住民のアンケートは欠かせない。
今必要とするものから、具体的な移転希望、生活再建に関することまで
こと細かな意見収集が必要である。
その中で将来のまちづくりに関して、まちで守るべきコミュニティや伝統的なものを、確認していかなければならない。
被災者の方が、自分の将来のまちを想像できるようになる時間と、環境づくりが必要である。


災害弱者
 今回の犠牲者のうち65歳以上の高齢者が54%という驚くべき数字が示された。
住民基本台帳の割合が25%であるので、逃げ遅れた高齢者がいかに多かったかということである。
一方、5歳以下の乳幼児は2.3%で、現在は215名だけ確認されているが、行方不明は大人以上に多いはずである。



 阪神淡路大震災でも幼児や婦人、お年寄りの犠牲が大きかった。
津波災害の場合、高台への避難は坂道の移動が常となるため、体力的にも厳しい。
災害路の計画はバリアフリーを基本にしなければならない。
一方、1秒でも早く高台に向かうための階段が、多くの命を救ったことも事実である。

災害弱者を守り、地域教育を育むまちづくりが目標である。

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