春の山にて
裏切らぬ故郷の山と気がかりなこと
蔵王の地蔵岳から熊野岳に向かう。
今年の蔵王は雪が多い。
標高1600m付近でもまだ5~6mの積雪がある。
久しぶりの春山で昔に比べて気になったことがある。
1.雪の色が茶色く感じる。
2.アオモリトドマツが小さくなった。
3.ダケカンバの倒壊が目立つ。
4.樹氷は北風に向かって育つが、幹も北に傾く木が多い。
いずれも、地球環境問題と密接に関わっているが、4だけはわからない。
もう一つ気になっていたのは、お釜の変化だ。
もし、この時期に旧火口の雪が融けていたら、温度が上がった証拠となる。
1時間ほどで熊野岳に着く。
南東鞍部より恐る恐る、お釜を覗きこむ。
まだ凍っていた。前と変化はなく安心した。
1895年にお釜が噴火し、その翌年、明治三陸沖地震が起き、
その2カ月後に内陸直下型の陸羽大地震が起きている。
したがって、お釜の温度上昇⇒東日本大震災⇒村山大地震、
というシナリオは白紙に戻った。
標高1841mとは言え、5月の蔵王はまだ冬山である。
晴天から1時間位で、霧に覆われホワイトアウトになることもある。
夜は氷点下になることもある。
この日も午後から雲に覆われた。
雪の合間に覗く高山植物群や、雪原の景色はすがすがしい。
特にコマクサ、ガンコウラン、イワカガミ、ツガザクラなどの
群落は、人が造り得ない小宇宙を形成するアートである。
この不思議な風景を見て、白い砂浜から望むサンゴの根、
礁湖内のテーブルサンゴ群落を想像してしまうのは私だけだろうか。
奥羽山脈には雲のカーテンができ、太平洋側は厚い雲海に覆われていた。
それは福島から三陸を包む巨大な空気のかたまりで、
八方平を流れ落ちる様子は、おし寄せてくる津波のように感じた。
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