岩手日報の避難者アンケートによると、被災前のまちに住みたい人と、
住んでいたまちの高台に移りたい人が、ともに41%台のほぼ同数だった。
まだ将来のビジョンが見えてこないなかで、予想できた結果であるが、
安全な元のまちで生活したいと思うのは正直な人の心であると思う。
おととい、
岩手県庁と7市町村役場、昨日は宮城県庁と5市町村役場を訪問した。
復興計画案の資料を渡し、説明させてもらった。
多くの被災者が各種証明書の発行や仮設住宅の申し込みに並んでいたり、
現場の復旧工事に忙殺されている役場もあり、多くの市町村が計画案まで
たどり着いていないのが現状である。
各市町村で復旧の進行が大きく違うのは、被害状況と規模の違いにより
仕方ないことである。その中で、計画を進めるための
ポイントが見えてきた。
1.計画のターゲットがつかみきれない
阪神淡路大震災の復興の時は、
「都市のオープンスペースの確保と、商業の復興」という
明確な計画目標があり、財官民が一体となって進めることができた。
しかし今回は、被災地が広範にわたること、津波のフィジカルな対応策が
確立していないこと、新たな漁業振興策の必要性、商店街の復興、
宅地盤の確保、エネルギー問題と多くの課題が街づくりに求められている。
一市の都市マス案を描くだけでも多くの要素を組み合わせる必要があり、
すでにそのレベルでの作業に入っていてもおかしくないが、第一段階は
「災害に強い街づくり」だけを計画目標にして進めても良いのではないだろうか。
2.国の対応と被災地の温度差
被災民にとって、エコタウンとか、スマートシティとか、水産業特区とか、
東北らしいまちとか提示されても、まだ、復興計画についての
新たなビジョンづくりを
受け入れる余裕がないのではないのだろうか。
6月の震災復興会議の提言や震災復興院の設置などが、除々に進んでいくうちに、
元の土地で仮店舗を建てたい人や、住みたい人が増えていくと思われる。
このままでは、ばらばらな街並みができあがるか、行政と被災者の軋轢が増える可能性がある。
既存の法規制の特例措置、あるいは新たな震災補助事業、補償制度を作る作業だけは、
平行して、早急に進めてもらいたいものである。
特に必要なのは、震災事業区域の指定による、集合換地の簡略制度化、
宅地の先買い制度の特例、用買事業の拡充、全体的な登記の簡略制度などであろうか。
3.まだまだ必要な人材
幹線道路の復旧には、さすがと思わせる
土木国家の底力を感じたが、
連休が明けボランティアが減ると、個人の瓦礫の処理の遅さが目立ってくる。
町道クラスの復旧はまだまだで、肝心の国道でさえ、地盤沈下による冠水個所は多く、
市街地事業と一体となった計画を検討すべき個所も多いと感じる。
計画設計を進めるのは実質的には、民間技術者なので、早い業務支援体制を整えることが望まれる。
一方、もとの生活ベースを取り戻したい地元の人々は、自らまちづくりを行おうとし始めている。
各公共団体や協会からの支援も始まると聞いたが、民間ベースでは難しいので、
国から
まちづくりコーディネーターを各町村単位で派遣しその間を埋めていくことが望ましい。
1階部分が浸水した暗い仮庁舎で、技術的な部分でなく、市民からの強い要望、
要求に対応していた場面もあったり、心身ともに疲れている職員を多く見かけた。
たった1~2人でこれだけのプロジェクトをまとめるのは不可能であると感じた。
長期的な技術者支援を行う必要があると思う。
かく言う私自身、すぐにお手伝えできない状況で、
後髪を引かれれる思いで帰路についた。