守るべき東北の原風景と自然

Katzu

2011年05月24日 11:20

 長い雪の季節の後の新緑の息吹は、人動植物、万物の喜びが自然界に満ち溢れる。
春は里山から訪れる。
福寿草、イヌノフグリ、フキノトウから咲き始め桜の季節を迎える。
川は雪解けの水で音をたて、新緑の芽が数えきれない緑のグラデーションを創る。
遠景には雪を抱いた山々がある。

              最上川と葉山
 稀有のブナ林を中心とした落葉樹林帯は、1万年以上も前の縄文時代から続く
みちのく文化圏を形成してきた。
それが2000年程度で、照葉樹林帯を開墾して作られた大和社会に飲み込まれ
てしまった。みちのくの生活はこの自然環境と共生する循環型社会であった。

              月山の水芭蕉 
 春とともに人間の所作も動き始まる。
冬の季節は体がきつく、自分にとっても腰の重い憂鬱な日々であった。
故郷には春祭り、花見があり春を待ちわびる習慣が、連綿と続いている。
今年は、大震災、原発問題で春の行事も色あせてしまった。
そもそも、東北に留まった理由の一つは、この大震災と新緑の東北の魅力と、
山の環境の変化を調べるためであった。
 
 世界中のどこに行っても、地球温暖化の影響を強く感じる。
特に南洋の海の変化は、直接人々の生活に関わってきている。
世界中で環境保護も教育も開発の在り方も、見直す岐路に立っている。
東北地方は、地球環境の変化をあまり受けていない地域であった。
言い換えれば温暖化の影響は大きく生活を変える程ではなく、
数値的に証明されても経済に与える影響は小さかった。

現実はどうであろうか。

             西川町志津地蔵沼
 月山はかつて森敦が死の山と称した、出羽三山の修験道の中心であった。
人の信仰心と自然環境が生んだ、みちのく歴史文化の象徴である。
先週久しぶりに訪れ、その変化を感じた。
夏スキーや紅葉が有名だが、今の新緑の時期が一番月山らしさを感じる。
ブナ林と雪渓の対比が清々しい。

 しかし、雪の色を見ると唖然とする。
かつて夏山の雪渓でかき氷を食べたイメージとは違い、灰色で汚れが目立つ。
環境教育が浸透し、入山する人間も減ったにもかかわらず、
黄砂の影響が大きいのだろう。

             月山姥沢スキー場 
 
 里山の荒廃も気掛かりである。高度成長時代に林野庁が植林した杉林は
管理も行き届かず、道は枯枝でふさがれ荒廃している。
動植物が少ない植林された杉林は、子供の頃から嫌いで、大人の行為に
懐疑的だったがあの正直な感覚は正しかった。

           大江町古寺ブナ峠付近
 人と自然との共生するサイクルが狂いはじめた結果である。
朝日連峰は世界遺産の白神山地以上の広大なブナ森に覆われているが、
その間の杉林も同様で、伐採あとに生えたブナの2次林の方が豊かな
生物体系を維持している。

           朝日連峰金堀沢のショウジョウバカマ
 しかし、この環境に大きな脅威が訪れた。
原発の放射能である。
福島の被災した人が戻る頃には、あの豊かな里山はどうなっていることだろう。
現在、山形県の放射能レベルは低いが、それは北風と奥羽山脈により
守られているためである。
しかし、これから夏にかけて南風が吹けば、放射能レベルは上がる。
私の従妹は、毎日ドイツ気象局の放射能飛散予測を見ながら、夫の帰る日を
気にかけチェックを怠らない。これは今までの事故経緯を考えれば正しい判断で、
多分自分が外国に居れば同じことをすると思う。
日本に居るとリスクマネージメントが遅れていることに驚く。
台湾気象局でさえ出している飛散予測を、公にできない日本のシステムは異常だ。
この予報を見て、外業を控えるようにと指示できる日本の経営者はいるだろうか。
2日後の山形内陸部の放射能拡散は、事故後初めて福島並みに上がると予測されている。
           
                      ドイツ気象局放射能拡散予測はこちら

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