震災復興計画その20

Katzu

2011年06月28日 18:50

 中央防災会議の中間とりまとめが発表された。
主旨は以下の通りである。

1.1000年に一度の最大クラスを想定し、ソフト・ハードの総合対策を講じる。
2.100年に一度の津波については、費用対効果を考慮しつつ、
 引き続き防波堤対策を継続する。一方、粘り強い構造物の開発を進める。
3.歴史史料、過去の被災分析、地質調査を重視する。
                                   中央防災会議のニュースはこちら 

これらはおおよそ想定内の結論である。
ここでの課題は、1000年に一度の津波対応である。
ハードな対策だけでは到底防ぎきれないことが事実となった。
その前提となるのは減災を前提とした街づくりである。
ハザードマップの見直しと避難計画、情報伝達の見直し、
災害教育の徹底が基本である。
今回の被災状況分析より、予想される被災家屋割合、死亡率なども
住民に明示すべきである。

 100年に一度の津波に対応した粘り強い防波堤とは何か。
国交省によると、ケーソンが滑動しないように自重を重くする、
洗掘されないように基礎をブロックで固める。とある。



当初、柳のようにしなる柔構造物の新規開発をイメージしていたが、
期待したものでなかった。
これは、ケーソンの補修と壊れた基礎部分を補強するだけである。
多くの基礎連結ブロックが剥がれ崩壊したこと、第2波、第3波、引き波、回析波
による破壊力を考えれば、過去の実績と同じ繰り返しで終わるのではないか。

構造物の有効性ばかりを強調し、従来と同じ維持修繕工事を延々と繰り返す。
これは日本の土木行政の最も批判されるべきところである。

1つの市の防波堤に100億もの工事費をかけ、既得の権利を守るように造り直すより、
同じ予算で新しい安全な街を造ったほうが効果的な場合もある。

 同じ基準で石巻市から南相馬市まで、延長100kmの100年確立の防波堤を
建設した場合を試算すると、約5000億円かかる。
これだけで1万人規模の安全な新しい街ができてしまう。

 中間報告で欠けた視点は、柔軟な整備の対応を、被災状況に合わせ行う点にある。
一度決めた構造基準や施工方法は、どこでも同じ補助金運用で施行される。
特に防波堤の有無は、街全体の整備プログラムに基づいた、トータル的な
事業マネージメントを行うべきであろう。

ようやく、各自治体で計画案も挙がり始めた。
これから、時間をかけ官民との話合いにより計画が決められるだろう。
復興計画はここで一時終了したい。
もっと実のある話を先行させたいと思う。

 最後に、国土利用の方針が立たないままにスタートし始めている復興計画に、
誰も疑問を持たないのが、不思議日本の象徴である。

自分の宅地を失った流民が10万人もいるというのに、仮設住宅計画、生活補償、
営業補償、エネルギー問題、経済復興、政治劇ばかりで、
土地施策を真剣に取り上げる議員もマスコミも知識人も、誰もいない。

今の東北地方の被災地は、太閤検地の前の状態にあることを認識すべきである。

街づくりの基本は土地である。 

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