この時期のやんばるは、イジュの花がきれいだと聞いて出かけた。
中部の恩納岳付近はすでに満開だった。
途中、国頭村のやんばる野生生物保護センターに寄った。
ここは環境省の施設で、やんばるの環境教育の拠点になっており、
山に入る前の情報収集にも役立つ。
ヤンバルクイナのはく製を手で触るコーナーがある。
足が太く、思ったより羽根が大きい。
南洋では空飛ぶニワトリがいたが、鍛えれば飛べそうだ。
センターでは、野生動物のロードキルの実態や、増えすぎたマングースを
捕獲するための、マングースバスターズの話も聞くことができた。
その作戦は、S-T防御ラインから北側の保護地域のマングースを駆除し、
北進を食い止める目的で、日々活動している。
登山道を外れ少し森に入ると、かなりの罠が仕掛けられている。
やんばるの自然を知るには最適な、国の無料施設なので、
美ら海水族館だけでなく、かしこい家族連れには是非、寄ってもらいたいところだ。
やんばるの森は、もう夏の風情だ。
与那覇岳の標高400m付近は、イジュの花も月桃の花も見えない。
樹高が高いため見えづらいためか、それともまだ早いのだろうか。
内地では梅雨の6月下旬に咲くクチナシの花が咲いていた。
甘いかんきつ系の匂いがする。
クチナシはGardeniaの名の通り、鑑賞用庭木の品種が多いが、
もともとはアフリカ、南アジア原産の南洋の花である。
ビリーホリディのトレードマークでもあるが、
その花はアメリカ産の八重咲きのものだった。
梅雨の花はなぜ白色が多いのだろう。
梅雨の緑に映える色は、花弁の白に雌しべの黄色。
甘い香りに虫が集まりたくなる。
色素学を研究しなくても、虫と植物の気持ちになると何となくわかる。
シロノセンダングサに止まったツマムラサキマダラは、
台湾からの迷いチョウで有名であったが、沖縄に土着している。
山道から外れ、小さな沢に入ると、苔で足が滑り、
小さな滝になっていて、先に進めない。
水底の石にはサワガニがいて逃げて行った。
緑に包まれ、息苦しいほどの空気の濃さを感じる。
クワズイモは名の通り、食べれなくて残念だが、
この大きな葉の下にはたくさんの生物が隠れている。
カタツムリは目当てのメロン色のアオミオカタニシは見つからず、
沖縄固有のオキナワヤマキサゴ、リュウキュウキセルカイモドキがいた。
この森では固有種のカタツムリが多く残っているが、
この時期のアフリカマイマイは、どこにかくれてやがるのだろう。
オオヒゲコメツキが葉から出たり入ったりしていた。
この山の北東側はヤンバルクイナの生息域で、
夕方はそちら方面から鳴き声が聞こえてきたが、今日は聞こえない。
似たような波長の高いヒナ鳥の鳴き声が、草ヤブから
聞こえてきたが、定かでなかった。
シュラフもツェルトも用意していたので、駐車場で様子をみていると、雨が降ってきた。
シャワーのようになり林道を流れていく。
林道が通れなくなると大変だ。
今回はこの辺であきらめ、大国林道を北上し県道から58号線に戻る。
やんばるの森の魅力は、亜熱帯のルールのない
圧倒的な緑のグラデーションと生物の多様性である。