週末、2日続けて雨のやんばるの森に入った。
そんな人間は珍しく、山中では一度も人に出会わなかった。
やんばるを人から遠ざけ、その自然を守ってきたものは5つある。
それは
1.年間3000mm以上の雨と湿度
雨の日の森は意外にすごしやすい。
もともと暗いが、すがすがしく天の光さえ感じる。
よくあるのは、腕時計やカメラの内側が曇るほどの湿気である。
そして、不意打ちのシャワーは小さな沢を下り、苔のため滑り歩きづらい。
2.照葉樹林と繁茂する中低木・竹類
樹高20m以上のイタジイ、イジュ、などの高木だけでなく、
葉の大きい中低木や竹が一層森を暗くし、びっしり行く手を阻む。
3.ハブ・山ヒルの恐怖
これまで、野道で海人・山人に出会い、『何か採れるんですか』と聞くと
『ハブが居るから気をつけた方がいいよ。山ヒルもいるからね』
と何度も言われた。
この言葉に旅行者は弱い。
しかし、ハブは30年前に一度見ただけで、
現在は絶滅危惧種でもいいのではないだろうか。
山ヒルは地球温暖化で、最近は東京付近に多く出没している。
4.ヤンバルクイナなどの鳥や虫の声
秋の昼さがり、オオシマゼミの金属的な声の洪水に、耳が変になった後、
夕方にケェケェケェとヤンバルクイナの鳴き声が響き、
内地のものとは違う、カエル、コーロギ、ツユムシの鳴き声に驚く。
この声の一斉攻撃に、知らない者は畏怖を感じたことだろう。
5.米軍訓練場
北部訓練場はゲリラ訓練場として使用されており、やんばるの半分近い
78㎢の面積を占める、国内最大の米軍練習場である。
現在は砲撃訓練はなく、この土地利用が皮肉にも手つかずの自然を守る結果となった。
自然の営みを見るのは、雨の日が最適だ。
シダ類、キノコ類は雨の日に増殖し、つた類は太陽に向かう。
蝶は木の下で休み、貝が這い出る。
降った雨は30mm/時を超えると、小さな谷も滝になり、
川を駆け降り、1時間で海に達する。
海と山の環境は表裏一体である。
やんばるの森の南側、塩屋湾以南は、大雨が降り続いて
海は既に、赤土の流出で濁っていた。
この源河、津波付近は近年、農地開発が行われた地域である。
これは国頭マージと呼ばれる粘着度の弱い、赤黄色の土砂流出が原因である。
次の日も、海岸付近の赤褐色の濁りは消えていなかった。
霧雨の山に入り、再び暗い山域から下りると、天気雨(ティーダアミ)が降ってきた。
東部海岸に出ると晴空が広がった。
この慶佐次付近の砂浜の濁りはなかった。
この流域にはマングローブ林があり、この北側にはやんばるの森とダムがある。
東村の北側と国頭村の海は、かろうじて、やんばるの森に守られている。