2011年11月03日
タイの大洪水

タイの洪水被害が拡大している。
原因は、60年に一度と言われる、通常雨量の約1.5倍の大雨で、
チャオプラヤ川が増水したためと報告されている。
上流のアユタヤを始め、メコン流域でも冠水の被害地域は広く、
バンコック中心部に達している。

2010年2月8日

2011年2月8日
NASAの地球観測データで、昨年の画像を比較すると一目瞭然である。
タイ北部だけでなく、カンボジアのメコン川流域のトンレサップ湖周辺も
かなり浸水しているが、人口の多いバンコクのニュースしか伝わらない。
かつてチャオプラヤ川は、タイ語で川を意味するメナム川と呼ばれていた。
流域面積は160,000㎢、延長372㎞、勾配は0.1%と言われる。
水路設計の最低勾配は0.2%が限度なので、押し水で動いている状況だ。
日本一長い信濃川とほぼ同じ延長だが、流域面積は10倍以上もある。
今回の洪水の最大の課題は、都市部に浸水した後、
流入してくる毎秒800tの水を放流し続けると同時に、
これから降る雨の分を、強制排水しなければならないことである。
この排水に要する時間が、余計に必要になる。
タイの宅地開発の排水は、10年確立で設計されていると聞く。
日本は7年確率だから、日本より確率的には安全であるが、
それでもこの気象変動には対応できない。

開発による影響はどうであろうか。
FAO(国連食糧農業機関)のアジア太平洋森林協議会によれば、
過去20年にメコン流域の4.2%にあたる8,000,000haの森林が失われた。
しかし、タイ国内においては森林の減少は少なく、ほぼ横ばいとなっている。
メディアが伝えるように極端に、開発による急激な流出増の事実はない。
むしろ、気象変動に伴う管理体制の機能、ガバナンスの防災意識
の欠如の方が大きいと思う。

洪水に対する危機管理システムは、どうであろうか。
タイ内務省災害軽減局、都市計画局、農務省などには、どういう訳か
現在アクセスできないが、メコン流域4カ国によるメコン川協議会が、
流域のリアルタイムの降水量と、洪水予報を出している。

Mekong River Commission はこちら
メコン流域の管理監視体制を見ると、かつての国境を争った時代から、
欧州並みのグローバル化に向かう希望が感じられる。
タイ国内では、タイ語でタイ洪水モニタリングシステムというサイトがあり、
洪水領域をGoogleマップで表し、水路の高さや降水予報を公表している。
運営しているのはJISTDA(地理情報・宇宙技術開発機構)で、日本のJAXAも
技術支援によるリモートセンシングやGISの応用などで協力している。

Thailand Flood Monitoring Systemはこちら
在留邦人はこの情報を共有できているのだろうか。
タイは過去20年の間に干ばつ、洪水、地滑り、山火事、津波などの
自然災害が多発している。
映像を見ると、タイ人は洪水に対して、日本人の地震に対する意識と同じく、
慣れと心構えを持っているのが、せめての救いだ。
Posted by Katzu at 01:28│Comments(0)
│アジア
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。