2012年03月06日
空に向かう石積み
人は天に向かい石を積む。
平地がなくなると、斜面に住宅地を建設していく。
都市の防御を考えると、その究極の選択は山の上になる。
その結果生まれたのは、スペインの城塞都市クエンカや、
インカの空中都市マチュピチュである。

マチュピチュには、世界遺産登録間もない1985年に訪れた。
現在では世界的な観光地になったが、当時はクスコから、
わざわざ列車で1日掛けて行く日本人は、3人だけだった。
当時、関西地方の開発は関空、神戸・六甲アイランドの海上都市の建設が終わり、
開発適地は大造成のできない丘陵地帯に移っていた。
技術的な課題として、急傾斜地をどこまで宅地化できるか、
住宅はどれだけの傾斜に建てられるか、事務所内でも議論された。
一旦、事務所を離れ南米に向かったが、
旅行中に空中都市という言葉に興味を持った。
この遺跡は自然の尖峰群と宗教施設、棚田の石積みが個性的な景観を創っていた。
石は標高の高い所から切り出されたと言われ、尾根筋まで石積みが伸びている。

この空中都市は、敵を欺き、防御に長けた城塞都市と比較しても、
住むにはあまりに不適である。
泉の量、耕作地の広さからしてもせいぜい人口500人程度の集落であったろう。
ここは住宅地ではなく、インカの崇拝する太陽に、近づき祈る為の宗教都市であった。
日本の山岳宗教集落を思い浮かべれば納得できる。
天に登る石積みは、主に畑であるが、自然の岩盤を削ったものではなく、
石積みの基礎を砂、粘土で固め、その上に石を削りつつ調整しながら、
精緻な技術で積み上げられている。
その結果、隙間のない石積みは土砂の流出がなく、棚田のような維持管理
をしなくても、背後地盤が安定し、500年経った現在も平地の状態を保っている。
石の水路は精巧に作られ、現在も元の形状を留めている。

一方、インカの人々はこの都市を焼き払い、ジャングルに逃れた
と言われてきたが、最近別の事実が浮上した。
この遺跡を発見したビンガムは、インディジョーンズのモデルになった歴史学者
であるが、彼をはじめ研究者は、その後の調査過程で、遺跡に覆われた木々を
大量に焼き払ったために、花崗岩の遺跡の劣化が進んだと報じられた。
最も行ってみたい世界遺産として、30年前の50倍近い、年間5万人の日本人が
訪れるようになったマチュピチュであるが、ペルー政府は日本に
その遺跡保全のための補助金と修復を要請した。
遺跡の景観は変わらないはずなのに、人の興味はこれほど変わってしまうのだろうか。

石積みが天に向かうと、オベリスク(塔状の記念碑)のフォルムになる。
世界中には、古代のオベリスクが多く存在する。
その究極の例は、現代では東京スカイタワーになるが、
古代では旧約聖書に登場するバベルの塔となる。
宗教的な理由で、石積みは天に向かう。
空中都市といえば、2010年に清水建設が提案した赤道上の環境アイランド構想を
思い浮かべるが、震災後どう形を変え、どの方向に向かっているのだろう。

平地がなくなると、斜面に住宅地を建設していく。
都市の防御を考えると、その究極の選択は山の上になる。
その結果生まれたのは、スペインの城塞都市クエンカや、
インカの空中都市マチュピチュである。

マチュピチュには、世界遺産登録間もない1985年に訪れた。
現在では世界的な観光地になったが、当時はクスコから、
わざわざ列車で1日掛けて行く日本人は、3人だけだった。
当時、関西地方の開発は関空、神戸・六甲アイランドの海上都市の建設が終わり、
開発適地は大造成のできない丘陵地帯に移っていた。
技術的な課題として、急傾斜地をどこまで宅地化できるか、
住宅はどれだけの傾斜に建てられるか、事務所内でも議論された。
一旦、事務所を離れ南米に向かったが、
旅行中に空中都市という言葉に興味を持った。
この遺跡は自然の尖峰群と宗教施設、棚田の石積みが個性的な景観を創っていた。
石は標高の高い所から切り出されたと言われ、尾根筋まで石積みが伸びている。

この空中都市は、敵を欺き、防御に長けた城塞都市と比較しても、
住むにはあまりに不適である。
泉の量、耕作地の広さからしてもせいぜい人口500人程度の集落であったろう。
ここは住宅地ではなく、インカの崇拝する太陽に、近づき祈る為の宗教都市であった。
日本の山岳宗教集落を思い浮かべれば納得できる。
天に登る石積みは、主に畑であるが、自然の岩盤を削ったものではなく、
石積みの基礎を砂、粘土で固め、その上に石を削りつつ調整しながら、
精緻な技術で積み上げられている。
その結果、隙間のない石積みは土砂の流出がなく、棚田のような維持管理
をしなくても、背後地盤が安定し、500年経った現在も平地の状態を保っている。
石の水路は精巧に作られ、現在も元の形状を留めている。

一方、インカの人々はこの都市を焼き払い、ジャングルに逃れた
と言われてきたが、最近別の事実が浮上した。
この遺跡を発見したビンガムは、インディジョーンズのモデルになった歴史学者
であるが、彼をはじめ研究者は、その後の調査過程で、遺跡に覆われた木々を
大量に焼き払ったために、花崗岩の遺跡の劣化が進んだと報じられた。
最も行ってみたい世界遺産として、30年前の50倍近い、年間5万人の日本人が
訪れるようになったマチュピチュであるが、ペルー政府は日本に
その遺跡保全のための補助金と修復を要請した。
遺跡の景観は変わらないはずなのに、人の興味はこれほど変わってしまうのだろうか。

石積みが天に向かうと、オベリスク(塔状の記念碑)のフォルムになる。
世界中には、古代のオベリスクが多く存在する。
その究極の例は、現代では東京スカイタワーになるが、
古代では旧約聖書に登場するバベルの塔となる。
宗教的な理由で、石積みは天に向かう。
空中都市といえば、2010年に清水建設が提案した赤道上の環境アイランド構想を
思い浮かべるが、震災後どう形を変え、どの方向に向かっているのだろう。

Posted by Katzu at 17:57│Comments(0)
│歴史遺産環境
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