2012年06月01日

回復するサンゴと課題

回復するサンゴと課題

 1970年代の復帰バブルの宅地開発に伴う土砂流出、
その後のオイルボール漂着、オニヒトデの大発生、そして1998年の
海水温の上昇によるサンゴの白化現象では、世界の7割のサンゴが死滅した。
この間、八重山の海を中心に回っていたが、訪れるたびにサンゴは無くなり、
海中景観さえ変わっていく現状に、もう沖縄の海の中を見るのも嫌になっていた。
沖縄本島の海は壊滅的だったが、近年、西海岸では、各NPOや企業の活躍もあり
サンゴの移植・保護活動が実を結びつつある。

回復するサンゴと課題

 本島中部の東海岸はどうであろうか。
金武湾4島の東側は保礁が連なり、インナーリーフの水色部分は、
かつてサンゴが生息していた個所であるが、現在はアウターリーフの一部を除き
サンゴ類はほとんど生息していない。

回復するサンゴと課題
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この海域は強い南風と台風の影響もあり、
一度失われたサンゴ礁は回復する機会がない。
金武湾の内側は海流が止まり、先にサンゴが死滅したと考えられているが、
宮城島、伊計島西側の海岸段丘下の砂浜付近では、サンゴ類が確認できる。

回復するサンゴと課題

 伊計島の西海岸では、消波ブロックが自然景観を壊し、波による農地の浸食と、
消波ブロック事業の費用対効果が低いのは、誰の目にも明らかである。


回復するサンゴと課題

しかし、事業目的とは関係なく、消波ブロックには
サンゴが付着し始め、魚も集まっている。

回復するサンゴと課題

梅雨のこの時期は養分を含む雨水が流入し、海藻類も多く、
幼魚の群れが銀色に輝いている。
この東端の島は海流も早く、雨後にも関わらず透明度は高い。

回復するサンゴと課題

 宮城島の西海岸では、細砂の浜で、県のサンゴ礁資源調査では、
サンゴ類はほとんど確認されていなかった。
この日は、大雨上がりで、濁りもあり、海藻類には砂がかぶっていた。
土砂に覆われ死んだサンゴの傍らからは、新しいサンゴが生育している。

回復するサンゴと課題

水深2m程度の海岸沿いでも、ミドリイシ、ハマサンゴが確認される。
魚類もチョウチョウウオ、ヘコアユなど比較的豊富である。

回復するサンゴと課題

 課題は長年の土砂流出による影響である。
宮城島の耕地整備による土砂流出は、18,000m3が海に堆積したと試算される。
これは25mプール40杯分に相当する。
海が荒れると、今までの堆積砂が舞い上がる。
しかも、現在でも年間約360トンの土砂が流出・堆積し続けていると考えられる。
この状態ではサンゴ礁の生態は維持できない。
海の生態づくりを進めるためには、陸地の調整池・沈砂池の
整備、管理が不可欠である。

 この島の観光客は、管理されたネット内の砂浜で、
移植されたサンゴと、餌付けされた魚を見るだけだが、
近くの海岸を覗けば、このような状況を観察できる。

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Posted by Katzu at 22:27│Comments(0)海の環境
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