2014年12月09日
世界一と言われる水族館
70年代、日曜の夜に放映されていた『クストーの海底世界』は毎週楽しみで、
カリプソ号に乗り海洋調査をする彼の姿には、憧れに近いものがあった。
中でもモントレー湾を紹介したシリーズは特に印象に残っている。
バブル期の水族館ブーム以前から、各地の水族館には足繁く通ったが、
子供も大きくなり、海の知識や経験が増えるほどいつしか足も遠のいてしまった。
どの水族館もテーマパーク化してしまい、展示も特徴がなく展開が予測できるようになった。

その中で、沖縄美ら海水族館は、大きな水槽ができ観客数でも世界一となった。
水槽の大きさではさらに巨大なドバイ水族館ができ注目されたが、
今年、中国広東省の長降海洋王国が世界一の規模になった。
しかし、派手さや規模とは裏腹に、世界には常にトップに評価される水族館がある。

カリフォルニア州のモントレーベイ水族館(Monterey Bay Aquarium)である。
今年で30年の歴史を持ち、その先駆的な展示と運営には
多くの水族館関係者が参考としつつ、現在も目標となるべき水族館である。
世界一と呼ばれる水族館とは一体、他とは何が違うのだろう。

モントレーベイ水族館は、サンフランシスコから南に200kmのモントレー湾に面している。
スタインベックの小説で有名なキャナリーローの終点付近の道路角にあり、
その入口は意外に小さく建物にはなぜか煙突が出ている。
その理由と、この水族館の特殊性と趣旨は入ってすぐに理解できる。

エントランスは、地域を支え同敷地内にあったイワシの缶詰工場の設備と歴史の説明から始まる。
この水族館のメインテーマは、モントレ―湾のカタクチイワシなのである。

有名なケルブの水槽が巨大である理由は、全長6mのケルブが育つ環境と同じに保つためである。
ケルブに巻きつくようにイワシの群れが一つの生体として回る様子は、見ていて飽きることがない。

日本海に潜ると、海藻と波の動きに位相が生じ、魚だけでなく岩が動くように感じ酔ってくる。
この水槽の波に漂うケルブも生き物の様に動き、じっと見ていると海中と同じ感覚に陥った。

魚以上に、海洋植物の生育環境を整えるのは容易ではない。
ケルブの光合成を促すため屋上施設はオープンで、温度と酸素を自然に保つ為に放水している。

イワシの回る360℃の水槽、イワシの行動と漁の方法など、イワシは何度も登場する。

海辺の環境を保ち、海鳥が遊ぶゾーンがある。
干潟のセイタカシギ、ネコザメと泳ぐアシシギ、水中を遊泳するウミガラス、
外界とは遮断されているが、すぐ手が届く距離にいる。

展示の方法もひと工夫されている。
ただ単に、多くの種類を同じ方法で並べる手法は取られていない。

クラゲなどは特に過度な電飾で芸術的に表現することなく、背面はブルーで統一されていた。
世界の魚をあまねく紹介する趣旨ではなく、カリフォルニア以外の環境の生物の展示は少なく、
例えばサンゴ礁の生物などはたった3つだけの水槽であった。

水槽のディスプレイを見ると、垂直平面の窓だけではなく、
張り出し型の三角水槽、中央に配置された球形の水槽もある。

国内では屈曲率が高い水槽は観察に向かないとして敬遠されるが、
子供達が周りを囲い込んで立体的に見ることができる。
屈曲は感じないので、厚みを補正した高価な水槽である。

子供に飽きさせない工夫は、どの水族館よりも優れている。
館内のオブジェだけでなく、大人にも興味を持たせる魚やタコの模型は、子供の遊具でもある。

幼児や児童のための教育にも熱心に取り組んでおり、
館内フロアの約三分の一は子供のためのスペースである。

環境教育のコーナーも、他と同じレベルの展示で手を抜くことがない。
海洋投棄されたゴミは、実際の海中の姿で表現されている。

シーフードを検索し料理を見るレストランという、ユーモアのあるコーナーもある。

この水族館には、イルカやアシカのショーはない。
欧米の水族館では動物愛護の観点から、動物に芸をさせないことが認識されつつある。

水族館周辺の海岸では、カリフォルニアアシカやゼニガタアザラシが普通に見られる。
個体数の少ないラッコは館内プールで見ることができるが、周辺海域すべてが、
タイドプールで海とつながった巨大な水族館なのである。
地域の環境を守り、その自然の姿を観客に提供するという理想のもとに運営されている。

この水族館の設立を支えたのはヒューレット・パッカード社の基金で、同様に
モントレー湾水族館研究所(MBARI)が、海洋研究の先駆的な役割を果たしている。
研究は、海洋工学、海洋生物学、海洋地理学、海洋化学他多岐にわたり、
毎週のようにセミナーが開催されている。
水族館を支えるボランティアやメンバーシップ制度も豊富で、
観客向けのプログラムは、毎日10コース以上設定されている。
体験型のタッチプールでは、子供だけでなく大人に対しても
専門的なことについて知識のある研究員が、数名で対応してくれる。

民間団体であるため、政府に対しても明快な意見を述べる立場をとっている。
ホワイトハウスに、海の環境を守るように各自で意見を出そうというコーナーもある。

入場料が40ドルと高額で、交通の便が悪いにもかかわらず、
入場者数は年間200万人と日本の海遊館と同等の集客力を誇っている。

モントレーベイ水族館のスキームが見えてくる。
〇 水族館の展示の明快なテーマ
〇 地域の海洋環境の紹介と研究
〇 子供の環境教育の場の提供
〇 地域の環境保護活動、会員制度・慈善活動との連携
日本では旭山動物園をヒントに生態を見せる展示も増える一方、鶴岡市立加茂水族館のように
世界一のクラゲ水族館として特徴を出すような地方水族館も現れ、
提供する側と受ける側の関係が密接に発展していく次の段階に来ている。

カリプソ号に乗り海洋調査をする彼の姿には、憧れに近いものがあった。
中でもモントレー湾を紹介したシリーズは特に印象に残っている。
バブル期の水族館ブーム以前から、各地の水族館には足繁く通ったが、
子供も大きくなり、海の知識や経験が増えるほどいつしか足も遠のいてしまった。
どの水族館もテーマパーク化してしまい、展示も特徴がなく展開が予測できるようになった。

その中で、沖縄美ら海水族館は、大きな水槽ができ観客数でも世界一となった。
水槽の大きさではさらに巨大なドバイ水族館ができ注目されたが、
今年、中国広東省の長降海洋王国が世界一の規模になった。
しかし、派手さや規模とは裏腹に、世界には常にトップに評価される水族館がある。

カリフォルニア州のモントレーベイ水族館(Monterey Bay Aquarium)である。
今年で30年の歴史を持ち、その先駆的な展示と運営には
多くの水族館関係者が参考としつつ、現在も目標となるべき水族館である。
世界一と呼ばれる水族館とは一体、他とは何が違うのだろう。

モントレーベイ水族館は、サンフランシスコから南に200kmのモントレー湾に面している。
スタインベックの小説で有名なキャナリーローの終点付近の道路角にあり、
その入口は意外に小さく建物にはなぜか煙突が出ている。
その理由と、この水族館の特殊性と趣旨は入ってすぐに理解できる。

エントランスは、地域を支え同敷地内にあったイワシの缶詰工場の設備と歴史の説明から始まる。
この水族館のメインテーマは、モントレ―湾のカタクチイワシなのである。

有名なケルブの水槽が巨大である理由は、全長6mのケルブが育つ環境と同じに保つためである。
ケルブに巻きつくようにイワシの群れが一つの生体として回る様子は、見ていて飽きることがない。

日本海に潜ると、海藻と波の動きに位相が生じ、魚だけでなく岩が動くように感じ酔ってくる。
この水槽の波に漂うケルブも生き物の様に動き、じっと見ていると海中と同じ感覚に陥った。

魚以上に、海洋植物の生育環境を整えるのは容易ではない。
ケルブの光合成を促すため屋上施設はオープンで、温度と酸素を自然に保つ為に放水している。

イワシの回る360℃の水槽、イワシの行動と漁の方法など、イワシは何度も登場する。

海辺の環境を保ち、海鳥が遊ぶゾーンがある。
干潟のセイタカシギ、ネコザメと泳ぐアシシギ、水中を遊泳するウミガラス、
外界とは遮断されているが、すぐ手が届く距離にいる。

展示の方法もひと工夫されている。
ただ単に、多くの種類を同じ方法で並べる手法は取られていない。

クラゲなどは特に過度な電飾で芸術的に表現することなく、背面はブルーで統一されていた。
世界の魚をあまねく紹介する趣旨ではなく、カリフォルニア以外の環境の生物の展示は少なく、
例えばサンゴ礁の生物などはたった3つだけの水槽であった。

水槽のディスプレイを見ると、垂直平面の窓だけではなく、
張り出し型の三角水槽、中央に配置された球形の水槽もある。

国内では屈曲率が高い水槽は観察に向かないとして敬遠されるが、
子供達が周りを囲い込んで立体的に見ることができる。
屈曲は感じないので、厚みを補正した高価な水槽である。

子供に飽きさせない工夫は、どの水族館よりも優れている。
館内のオブジェだけでなく、大人にも興味を持たせる魚やタコの模型は、子供の遊具でもある。

幼児や児童のための教育にも熱心に取り組んでおり、
館内フロアの約三分の一は子供のためのスペースである。

環境教育のコーナーも、他と同じレベルの展示で手を抜くことがない。
海洋投棄されたゴミは、実際の海中の姿で表現されている。

シーフードを検索し料理を見るレストランという、ユーモアのあるコーナーもある。

この水族館には、イルカやアシカのショーはない。
欧米の水族館では動物愛護の観点から、動物に芸をさせないことが認識されつつある。

水族館周辺の海岸では、カリフォルニアアシカやゼニガタアザラシが普通に見られる。
個体数の少ないラッコは館内プールで見ることができるが、周辺海域すべてが、
タイドプールで海とつながった巨大な水族館なのである。
地域の環境を守り、その自然の姿を観客に提供するという理想のもとに運営されている。

この水族館の設立を支えたのはヒューレット・パッカード社の基金で、同様に
モントレー湾水族館研究所(MBARI)が、海洋研究の先駆的な役割を果たしている。
研究は、海洋工学、海洋生物学、海洋地理学、海洋化学他多岐にわたり、
毎週のようにセミナーが開催されている。
水族館を支えるボランティアやメンバーシップ制度も豊富で、
観客向けのプログラムは、毎日10コース以上設定されている。
体験型のタッチプールでは、子供だけでなく大人に対しても
専門的なことについて知識のある研究員が、数名で対応してくれる。

民間団体であるため、政府に対しても明快な意見を述べる立場をとっている。
ホワイトハウスに、海の環境を守るように各自で意見を出そうというコーナーもある。

入場料が40ドルと高額で、交通の便が悪いにもかかわらず、
入場者数は年間200万人と日本の海遊館と同等の集客力を誇っている。

モントレーベイ水族館のスキームが見えてくる。
〇 水族館の展示の明快なテーマ
〇 地域の海洋環境の紹介と研究
〇 子供の環境教育の場の提供
〇 地域の環境保護活動、会員制度・慈善活動との連携
日本では旭山動物園をヒントに生態を見せる展示も増える一方、鶴岡市立加茂水族館のように
世界一のクラゲ水族館として特徴を出すような地方水族館も現れ、
提供する側と受ける側の関係が密接に発展していく次の段階に来ている。

Posted by Katzu at 20:24│Comments(0)
│海の環境
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