2014年03月08日

なぜ希少生物を守るのか

 那覇空港を飛び立ち、住宅の密集した地域を抜けると、機は中城湾上空で水平飛行に入った。
海岸は金武湾の緑と薄茶のコントラストから、北部の名護辺野古沖上空に来ると、
海の色は深い青と浜の白のコントラストに変わった。
この海域は、藻の繁茂する浅瀬とキャンプシュワブの砂浜、大浦川が注ぎ込み
リーフエッジを抜ける大浦湾、北部の岩場と、ジュゴンが隠れ住みやすい環境が保たれている。

なぜ希少生物を守るのか

 前の週にはキャロライン・ケネディ大使が沖縄を訪れていた。
東京で大歓迎を受けた彼女も、沖縄では基地反対、サンゴ礁を守れ、ジュゴンを殺すな、
と書かれたプラカードを掲げた群衆に、ついに姿を見せることはなかった。
欧米の環境保護活動は、富裕層の潤沢な支援を受ける団体も多く、その活動の歴史も長い。
イルカ保護を訴える彼女の言動は、リベラル派のケネディ家の背景を見れば納得できる。

反捕鯨、イルカ保護運動は70年代のアメリカで盛り上がりを見せたが、
あの頃から一日本人としてある種の違和感を持ち続けた。
日本の捕鯨文化、食文化の違い、愛玩動物の嗜癖の違い、高知能生物としての
希少価値など、40年以上も同じ議論が繰り返されてきた。

なぜ希少生物を守るのか

イルカは海豚と書くように、その容姿だけでなく食の対象とされてきた。
日本には絶滅危惧種はなく、現在年間2万頭のイルカが捕獲されている。
皮肉にも、名護はかつてイルカのまちと言われ、市のシンボルとされていたが、
海洋博の開催と共に、批判されたイルカ漁もなくなり、裏の食文化になった。
最近、市役所近くに新しい像ができ、いつの間にか黒ブタのまちに変わっていた。
牛豚をと殺することもイルカ漁も同じだという、名護市民のアイロニーではないか。

なぜ希少生物を守るのか

 クジラは、IWC(国際捕鯨委員会)によると、現存する83種類の内13種類が
規制の対象とされ、絶滅危惧種の4種類のうち、ミンククジラは推定60万頭、
シロナガスクジラは2千頭と種類により開きがある。
マッコウクジラのように生態のわからない種類も多く、すべての個体数は
調査されていないが、全世界で200万頭は生育していると推測される。

なぜ希少生物を守るのか

 一方、海牛と呼ばれるジュゴンは、全世界に10万頭生息し、
沖縄近海には50頭以下しか生き残っていないと言われ久しい。
SPREP(太平洋地域環境計画)は、オセアニア、ミクロネシア、ポリネシア、
メラネシアの各国をメンバーに、移動性野生動物の保全に関する覚書を締結した。
これを受け、パラオは排他的経済水域内は、すべて、クジラ、イルカ、ジュゴンの
保護のための禁漁区であると宣言した。
ジュゴンの北限である日本では、絶滅した可能性が高いとされ
この太平洋諸国の動きには迎合していない。

しかし、以前より藻の食べ跡は何度も確認されていたが、
昨年、沖縄テレビのカメラマンにより本体が確認された。

なぜ希少生物を守るのか
    2013.7.11琉球新報 

 希少でない生物を守り、希少生物を保護しないのは、
人間の全くかってな価値観によるものである。

なぜ希少生物を守らなければならないのか。

人間に必要なものは作らなければならない。
人間の利に反するものは取り除かねばならない。
しかし、失なったことで取り戻せなくなったのが今の地球の姿なのである。

永遠に失ってしまう生物の生命が尊いのは、
宗教観でも、道徳観でも、正義感でもなく、
彼らが、住む環境を変えてしまう人間にとっても
生き残らなければならない環境のバロメータであるためである。



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Posted by Katzu at 18:29│Comments(0)海の環境
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