2015年04月29日

LCCのビジネス環境

LCCのビジネス環境

 スカイマークが民事再生手続きに入った直後、那覇―羽田便を利用した。
最後の搭乗になるかもしれないとの思いと、羽田の利便性のためだった。
沖縄格安便の先陣を切った当社は当初何度も利用した。
その後那覇便はLCC5社が乗り入れしのぎを削り、他のLCCとは経営方針の
異なるスカイマークは空席が目立つようになった。

LCCのビジネス環境

価格競争には敗れたが、そのビジネスの先見性と離島交通に寄与した点、
死亡事故ゼロの実績は高く評価できる。
たった1点、大手キャリアとLCCの中間をねらった経営姿勢は、
中途半端で古いビジネススタイルから抜け切れない印象を受けた。

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羽田便は機材搬入の遅れから2時間遅れた。
当社の遅延率20%は国内では最も高い。
しかし、安全性をおろそかにして間に合わせ、遅延を繰り返されるよりは、
安全のために時間を限って遅れた方が仕方ないと安心できる。

 LCCのエアアジア、ジャーマンウイングスの墜落事故が起きると、
決まったようにLCCの安全性が問われる。

 はたしてLCCは危険なのだろうか。

統計的にLCCの方が事故率は高いというデータの裏付けはない。
最新のエアライン評価によると、安全性の最悪評価13社中LCCは4社、
LCC会社の最良評価の割合は35%で、大手キャリア48%よりは低いが、
地域キャリア25%に比べて安全性は高いと評価されている。
安全性が疑わしい僻地への航空便の選択にはこのサイトが役に立つ。
http://www.airlineratings.com/

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大手キャリアのマレーシア航空、トランスアジア(復興航空)の事故が
相次ぎ、アジアで死亡事故のない長期経営の航空会社は、
トランスアジアが減りカンタスと日本トランスオーシャン2社になった。
天候の不安定な地域キャリアの事故率が高いのは当然であるが、
沖縄を拠点とする南西航空の時代から、離島の気象条件と自衛隊と米軍の
飛行制限の中でこれまで死亡事故がなかったことは奇跡的と言える。

 NTSB(米国家運輸安全委員会)の資料から、
100万飛行時間で致命的な事故にあう確率は4回というデータがある。
つまり、東京―沖縄間を4万回乗ると1回死亡事故に会う計算になる。
年間の国内便数65万便、1億人以上の乗客という数字は、
年に数回死亡事故が起きてもおかしくないが、国内では
19年間も民間航空定期便の死亡事故は発生していない。

国内の交通事故による死亡者は4113人(2014年警視庁)、
うち自転車による死亡者は542人(対歩行者含む)が犠牲者となり、
航空機よりはるかに高い確率となっている。


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 アメリカのサウスウェスト航空は、LCCビジネスの優良モデルと言われる。
米国内ではハワイアン航空とともに、事故のない安全な航空と評価される。
運営形態は独創的でアメリカ的な合理性と文化をうまくブレンドしている。

1、機種はボーイング737系のみ、最多の保有数で整備を統一している。
2、事前Web予約と当日カウンター予約では5倍近い価格差だった。
3、労働単価は高く、手当は時間でなくトリップ長で計算する。
4、経由便も含め全体的に駐機時間が短い。

5、座席は自由席で、ゲート前で再チェック後、順に列に並び入場する。

6、空港は市街地に近い馴染みのローカル空港を使用している。
7、シートは標準配置、無料のスナック・ドリンク、Wi-fiサービスもある。
8、社是は従業員の満足が第一、顧客第二を掲げている。
9、客室乗務員はフレンドリーで冗談を言い機内の雰囲気は明るい。

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1から4は、アメリカらしい合理的な運営方法で、
5は、2度チェックインする不合理な面はあるが、確実に乗客をまとめて
案内するAMTRAK同様のアメリカの古い旅客スタイルを踏襲している。
6から9は、アメリカ文化のショーアップ的な雰囲気で安心感を創り出す。

一見正対するような事柄だが、MLBの試合観戦を思い出した。
緻密で緊張し時に危険で血走ることもある状況でも、ショーやジョークや
他愛なさで明るい雰囲気を演出していく球場のあの一体感に似ていた。

航空機事故の50%はヒューマンエラーと言われる。
最近の事故を見れば経営のシワ寄せが人間に向いた場合、
LCCに係わらず危険率が高まることがわかる。
経営基盤の弱いLCCは1回の事故で破たんするケースもあり、
サウスウェストのビジネスモデルは手本とすべきものがある。

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 4月8日、成田空港第3ターミナルのオープン第一便を利用した。
空港関係者の方が多い中、施設をすべて見て歩いた。
広いフードコート、明快な通路、ベンチに工夫がみられるが、
交通アクセスの課題が浮き彫りになった。
LCC専用ターミナルを活かすには、都内からバスの直行便が必要である。

安かろう、悪かろうの偏見を払拭し、経済性でカバーするには限界があり
日本独自のLCCビジネスモデルを作るにはまだ時間がかかると感じた。
それを超えるポイントは、日本人特有の正確性、協調性、思いやりである。

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